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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




371 アニメ監督デビュー(17)〜短編オムニバス映画『Genius Party』

 キャラクターの修正を終え、本編の製作が実際に動き出しても、案外僕はヒマである。BG、つまり背景に使う絵のタッチや方向性をどうするかといった、のんびりした打ち合わせがあるくらいだ。とはいえ、美術さんが「ドアチャイム」用に描いたサンプルの絵を何パターンか前にしても、自分のイメージそのものとはなかなかいかないので、妙な緊張感だけは高まっている。なにしろ監督である自分が決めないと、すべてが止まったまま動き出さないのだから、と言われているし、優柔不断になることは許されない、と、ルーキー監督だから、とりあえず厳格に考えている。本当はそこまで自分を追い詰めなくても、この段階ではまだ大丈夫なのかもしれないのだが、なにしろやることなすこと初めてなので、適当にやるという匙加減もわからず、そうしたプレッシャーを受けやすい。早く決めなくてはと焦れば焦るほど優柔不断になるのである。まるで高級料理店でメニューを前にしたときのような。

 しかし、目の前に並んだBGのサンプルはさすがプロの絵で十分な仕上がりになっているが、僕がイメージする絵そのものではない。それは作画監督によるキャラクター設定を初めて目にした時とも同じである。ただ、鉛筆画のキャラクター設定とは違って、BGの場合はフルカラーだ。僕がこんなふうにと描いてみせるわけにもいかない。BGの多くはポスターカラーをガッシュ(不透明水彩絵の具の一種)のように使って描かれるようだが、僕はポスターカラーをそういうふうに使って絵を描いたことなど一度もないし、今ここでその技術を覚えている余裕などないからだ。そんなこんなで、いつまでも迷っていては迷惑だから、目をつぶって「これっ」とやりたい衝動に駆られる。が、そういうわけにいくはずもなく、その中でも一番イメージに近いものを選び、とりあえず「このラインでいきましょう。あとは追々」といった調子で前に進むことにした。追々何なんだか、う〜〜む、こういう不完全主義者では黒澤明監督には程遠いなと、帰宅後少し反省するのであった。



 ※福山さんのアニメ監督デビュー話を最初から読みたい方は →こちら 


2007年06月06日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部