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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




373 アニメ監督デビュー(19)〜短編オムニバス映画『Genius Party』

 これはもしかしたらヤバイ?
 主人公キャラの顔からヘアスタイルから体型まで、僕の設定から大きく乖離していて、許容範囲を逸脱している。僕は一挙に不安を覚えた。
 Tさんにこの大いに違和感のあるレイアウトのことを相談すると、「彼は動かし方が上手くて定評があるんです。特に炎のような不定型なものとか」と言う。「なるほど、しかし動きはいいとしても、キャラが別人に見えたのでは困るんだけど」と僕が不安を隠さずに言うと、「大丈夫です、最終的に僕がすべてチェックして直しますから」と言ってくれる。

 マンガの場合、キャラクターの同一性はすこぶる重要である。
 性格もそうだが、それ以前に絵が場面場面でブレるようではいけない。いくら巧い絵であろうと、Aという人物が終始Aに見えないようであればマンガとしては失格である。僕は専門学校の学生に、「Aという人物が始めから終わりまでAに見えれば、とりあえず絵は下手でもいいんです」と教えている。そう言い放つ僕が、よりによって自作のアニメ映画でその愚を犯すことになってしまっては物笑いの種である。Tさんは大丈夫と言ってくれているが、一度付いた不安の火種はなかなか消えそうもない。

 この時を境に、僕は家でもスタジオでも少しばかり忙しくなる。
 僕はレイアウトに描かれたキャラクター及び小道具に対し、徹底して修正を加えることにした。一度通したレイアウトも差し戻してもらい、自宅に持ち帰り、更に綿密な修正を加えていく。上がったレイアウトが溜まると、自宅に届けて貰ったりもした。時には数分の一ミリ単位で違和感を埋めていく。そうやって何百枚の絵を描いたことだろう。もともと描かれた絵に修正用紙を被せて修正するだけなので、何もない真っ新の紙に構図を考えながら描くことに較べれば遙かに楽な作業ではあるが、こんなにシャープペンシルの芯を減らしたのは近年ないことではある。



 ※福山さんのアニメ監督デビュー話を最初から読みたい方は →こちら 


2007年06月20日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部