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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




377 アニメ監督デビュー(23)〜短編オムニバス映画『Genius Party』

「とはいっても、一応お好みだけでもお聞かせもらえたほうが…」

 というプロデューサーの再三のお願いを断固拒否出来るような強固な意志を持った僕ではないので、またぞろ僕の中の音楽の虫が這いずり回り始めた。そうした中で、渡辺音楽監督と最初の打ち合わせをやることになった。

 わずか14分ほどの映画である。あれもこれもにならないように、自分なりに節制しながらまず僕が望んだことは、ハリウッド映画にありがちな、絶え間なく音楽が鳴り響いているようなBGMは避けて欲しいということであった。基本的には生活ノイズを通底音とした、しかしテンション高くピーンと張り詰めたような静かさが印象に残る映画であって欲しいからだ。なので、音はあまり厚くなく、隙間の多いシンプル且つ重く沈み過ぎないものであること。絵コンテから受ける印象だと、現代音楽的な不協和音を基調とした音楽をすぐに連想しそうだが、僕の中ではこの物語はむしろ滑稽感を発想の起源としているものなので、むしろラグタイムに繋がるような軽さが欲しい、といったような希望を述べてみた。

 数日後、プロデューサーから、候補を一つftpにアップしたので聴いて欲しい旨のメールが届いた。早速ダウンロードして聴いてみた。打ち込み系デジタル音楽だった。この手の音楽なら僕でも作れると思った。僕も昔打ち込み音楽に凝ったことがあるが、それはあくまでミニチュアを作っている感覚に過ぎず、決して本物の、つまり原寸大の音楽を作っているという感覚ではなかった。なので、こうしたサンプリング音源をデジタル・シーケンサーで鳴らす音楽に対しては、どんなに完成度が高かろうと、僕は数分の1にスケールダウンされたミニチュア性を感じてしまうのである。たとえて言えば、どんなに精巧に作っても乗れない車である。その感覚は如何ともしがたいので、この候補はすぐに却下した。僕が欲しいのはミニチュアではなく、原寸大の音楽なのだ。

 そういえば、僕は最初の打ち合わせの時に、アナログ系音楽で打ち込み系デジタルはダメという希望を言い忘れたのかもしれない。僕の中ではそれが余りにも普通で当たり前のことだったからだろう。



 ※福山さんのアニメ監督デビュー話を最初から読みたい方は →こちら 


2007年07月18日掲載

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