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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




378 アニメ監督デビュー(24)〜短編オムニバス映画『Genius Party』

 またしばらくすると、2組のミュージシャンのサンプルがftpに上がった。その1組の作曲家が今回「ドアチャイム」のための音楽をお願いすることになったCombopiano氏である。Combopianoというプロジェクト名に氏を付けるのも変だが、クレジットがそうなっているので仕方がない。主催するのは渡邉琢磨さんという大変ハンサムで才気溢れる方である。
 もう1組のほうは、エレキギターをじゃりじゃり荒っぽく鳴らす若干アンダーグラウンドな印象のあるものだった。少し面白いとは思ったが、音のヴァリエーションが少なく僕の物語には合わないような気がしたのでボツ、逆に音楽の幅が広く、多彩な展開を見せるCombopiano氏のほうをほとんど迷わずに選んだ。

 そのCombopiano氏とも打ち合わせをすることになった。渡辺監督がどのカットにどういう傾向の音楽をどれくらいの時間載せるかといったメニューを書いてきたので、それをベースにまた僕の希望を述べていく。たとえば、カット141からのメロディは、カット20から流れる同じメロディによる変奏曲でいいのではないか、ただし、カット20では普通に美しく、カット141では不協和音が混じったやや不安気な音に、とはいえ、ATG(※)っぽくならないように、カット173からラストにかけては、それまで掛かっていた雲が切れて晴れ間を見せるような展開にといった具合に。そして、打ち込みによるデジタル演奏ではなく、アナログ、つまり人が演奏したものでお願いしますと念を押した。

 数日後、まずは作品の最初に流れる音楽がftpに上がった。
 早速聴いた。素晴らしい出来だと思った。風景に、主人公の内面に、一挙に奥行きが増した感じがした。なにより、まるで映画みたいだと思った。いや、映画なのだが、動かない絵コンテに音楽を合わせながらそう思った。

 そのあと、続々と曲がアップされ、僕の注文に改良を加えながら、音楽は完成した。僕の希望がすべて叶ったわけではないが、それで良いのである。むしろ希望が全部叶っていたら、最初に書いた通り、今よりは遙かに統一感の無い、とっちらかったものになっていただろう。観客の心理を一つの方向へ誘導するようなあざとい手法は好きではないが、Combopiano氏のこの音楽は、決して出しゃばることなく、観客の心理の流れをきっちりサポートしてくれるに違いないと思った。

(※)ATG:日本アート・シアター・ギルドの略称。
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 ※福山さんのアニメ監督デビュー話を最初から読みたい方は →こちら 


2007年07月25日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部