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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




383 アニメ監督デビュー(29)〜短編オムニバス映画『Genius Party』

「ドアチャイム」は台詞のあまりない物語で、主人公といえど滅多に喋らない。画面には終始出ているのだが、登場時間当たりの台詞の量となると極端に少ない。彼は自分自身のことも含め、何かを言葉で語るという点に於いて未だ発展途上の少年であり、ピッタリくる言葉が見つからないまま、ぼそぼそ喋るといったキャラクターだ。
 反対に、登場している間絶え間なく大声で喋り続けるのは通行人のオヤジである。彼は良くも悪くも出来上がってしまった一丁上がりの人物で、蘊蓄をテープレコーダーのように繰り返し語りたがる。彼には言葉を選ぶことの迷いはない。そういったイメージのキャラクターだ。

 そのオヤジの声を、俳優の小倉久寛さんにやっていただいたわけだが、彼はこの物語を難解に感じたらしい。「物語の方向性が見えないんだけど」とおっしゃる。つまり、何を言いたいのかわからないということだろうと僕は勝手に解釈して、「いや、まぁ、奇妙な設定にしてありますが、簡単に言えば、今の若い人たちがよく口にするところのいわば自分探しの物語だと思っていただければ……」といったような答えをたどたどしく返したが、ますます彼の頭を混乱させてしまったかもしれない。

 ともあれ、リハーサル&本番を始める前の一応の打ち合わせの中で、僕からは「日本のお父さんをやってください」というお願いだけをした。舞台もTVドラマも経験たっぷりのベテラン俳優さんなので、それだけで十分だと思ったからだ。案の定、アフレコが始まると、僕が期待する以上の、まさしく「日本のお父さん」の声がミキサー室に響き渡り、その味わいの深さに僕らの頬は思わず緩んだ。



 ※福山さんのアニメ監督デビュー話を最初から読みたい方は →こちら 


2007年09月05日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部