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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




386 アニメ監督デビュー(32)〜短編オムニバス映画『Genius Party』

 栩原くんのアフレコが順調に進んでいる最中、岩井七世さんが到着した。背が高く美しいのは言うまでもなく、周囲にパーっと花が咲いたような華やかさが生まれる。いつも不思議に思うのだが、こういう人々は何故か瞳がきらきらと宝石のように輝いている。そのきらきらした瞳にしっかり見つめられながらアフレコの打ち合わせをやることになるのだが、こんな時アガるのはむしろ僕のほうである。きらきら瞳の美しい人に僕は極端に弱いのだ。曲がりなりにも監督である、しどろもどろにならないよう、なんとか必死で冷静を保ちつつ挨拶と打ち合わせを行う。

「物怖じしない、物事を深刻に考えない、どんどん前に出る陽気で快活なキャラクターです」と説明し、早速栩原くんとの声のコラボレーションが始まった。

 岩井さんの声は信じられないほど可愛かった。
 まさに可愛いのである。その喋り方、発声、歯切れの良さ、甘み、抑揚、すべてがドギマギするほど少女らしく初々しい。じっと聞いていると、恋しそうになる。いや、マジでスタジオという機能的に過ぎない空間が、僕の妄想の中でみるみる花咲く乙女のワンルームに変わっていく。僕の中に眠っている恋的妄想の原型みたいなものが、ヤバイほどに掘り起こされていくのである。スタジオに入るまでは、想像だにしなかったことが僕の中で起こっている。「はい、それでは本番行きます」などといった野暮な声が入るから現実に引き戻されるが、彼女の台詞をカット無しに聞き続けるとしたら、僕は気持ちよくて本当に恋をしてしまっただろう。

 そんなこんなで、危うく叶わぬ恋に陥りそうになりながらも、無事アフレコを終えたわけだが、僕としてはほぼ満点の結果が得られた。あとは、いよいよミックスダウンである。これが完成すると、俄然映画が映画らしくなる、はずである。



 ※福山さんのアニメ監督デビュー話を最初から読みたい方は →こちら 


2007年09月26日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部