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* 連載フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




390 アニメ監督デビュー(36)〜短編オムニバス映画『Genius Party』

 まずはムックやパンフレット、あるいは後に発売予定のDVDに収録するためのインタヴュー、写真撮影及びヴィデオ撮影は言うに及ばず、極めつけは秋葉原で行われた試写会の舞台挨拶であろうか。あの米アカデミー賞助演女優賞候補にノミネートされた菊地凜子さんを始め、カンヌ映画祭最優秀男優賞の柳楽優弥さん、俳優の三上博史さん、そして僕のアニメで声優をやってくれた栩原楽人くんたちと同じ壇上に上がるのである。そして、TVカメラに向かって微笑み、パシャパシャと激しく瞬くストロボの嵐に眩しそうに目を細めるのである。凶悪な犯人でもストロボのシャワーを浴びるかもしれないが、ここはそうではない。マスコミ各社からインタヴューを受ける儀式もあり、これまた凶悪犯人へのそれと違って決して罵声が飛ぶこともない。僕の下手なジョークに皆さん笑顔で応えてくれる。そう、まるでスターなのである。この瞬間だけは、僕も菊地凜子さんたちと同じステージ、同じスターとして取り扱う目線に囲まれて立っているのである。

 正直、これは気持ちいいものである。
 いや、ついでにスター気分にしてくれただけであって、もちろんこれが錯覚に過ぎないことは重々承知の上での話を僕はしている。マンガ家は滅多にマスコミのインタビューなど受けることがないから、こういう経験が珍しいということもある。「マドモアゼル・モーツァルト」が舞台ミュージカルになっても、原作者である僕のところへは誰一人訪れなかった。おそらく、このミュージカルの作曲を依頼された小室哲哉さんは、色んなメディアで華々しく取り上げられたことだろう。主役を演じた土居裕子さんも、その後「モーツァルト役」として新聞や週刊誌などでよくお見かけした。それは彼らが紛れもなくスターのエリアにいる人々だからである。

 マンガ家はそうではない。
 仮に作品が何100万部売れようとも、作者であるマンガ家自身がマスコミの興味の対象になることは滅多にない。それがこの業界の“常識”と思ってきた僕だから、アニメ監督というものがマンガ家よりはいくらか芸能マスコミ寄りの職業だと感じたし、それを今回大いに楽しませてもらう結果になった。

 さて、締切のない生活は、時間がゆっくり過ぎていく。
 締切作品のためのアイディアではなく、考えたいことだけをいつまでも考えていられる自由。もっとも、ただこのまま何もしないことの幸福を味わってばかりいては、フトコロのほうが干上がってしまうので、その自由も期間限定ではある。リタイアするには蓄えもなければ、歳もまだ若すぎる。というわけで、もうひと花、そう、出来ればもう一花咲かせたいと思っている。



 ※福山さんのアニメ監督デビュー話を最初から読みたい方は →こちら 


2007年11月21日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部