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* 連載フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




391 ベースウーマン養成特別講座(1)

 もう一花咲かせたい!

 と前回一応前向きに締めくくったが、よく考えると、僕はマンガ家として「もう一花」どころか、まだ一花も咲かせていないような気がしてきた。はて、僕はどこかで一花を咲かせたっけ? それはいつ? どの作品で?

 そうなのだ、僕はこれまでの人生、ただひたすらマンガを描くだけの仕事しかしてこなかったのにもかかわらず、出した単行本の数はほんの僅かだし、まして作品がヒットしたことなど一度もなければ、単行本のほとんどは初版っきりである。そうした売れてこなかった実績が積み重なってデータ化され、更に売れないマンガ家としての確固たるブランドを形成していくものだから、最近では未収録作品が沢山たまっているのに、単行本すら出してもらえなくなっている。つまり、僕はマンガ家として「もう一花」という悠長な身分ではなくて、実は今でもせめて一花くらい咲かせなくてはならない立場なのかもしれないのだ。

 そう考えたら、何だかどっと疲れてしまった。
 また振り出しに戻された気分である。そういうふうに考えなければいいだけの話だとは思うが、余計なことに考えてしまったのだから、もう手遅れである。止められない止まらないのカッパえびせんだ。しばらくはその考えが頭を支配するのを防ぐことは難しく、いやでも付き合うしかない。なので、一応連載出来るようなマンガのネタを考えてみるふりをしてみるわけだが、当然そう簡単に一花咲かせられるような素敵なアイディアが浮かぶわけもない。出るのは、いつもの福山庸治風のアイディアばかりである。そういうものが売れないことは、業界人ならおそらく全員知っている。知らなければ、トーハンや日販のデータが教えてくれる。

 どんどん疲れるばかりである。
 そこで、もうマンガはいいから、別の「一花」はないかと考える。もちろん、逃避だ。そんなものなどあるわけがないのは、自分自身が一番よく知っている。
 そんなある日、学校から帰宅したつれあいが「Tさんがベースを教えて欲しいんだって」と言った。


2007年12月05日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部