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* 連載フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




394 ベースウーマン養成特別講座(4)

 ところが、補助員のTさんに放課後ベースを教えるようになった。その時間、僕は合わせてギターを弾く。すると当然ながら、ギターを弾くことのモチヴェーションが高くなる。モチヴェーションが高くなると、それまでどうでも良かったことも、どんどん底上げされることになる。いわば、恋をすると俄然オシャレに目覚めるのと同じ類である。そして、その一つがギター・アンプであることは言うまでもない。

 それまで息抜きのように何となく手慰みだけでギターを弾いていた。それも、きっちりとした曲を弾くことはなく、ほとんどは、ただひたすらアドリブで弾くだけである。それをいつも聞かされているつれあいがよく言う。「曲の最初から最後まで弾いたのを聴いたことがない」と。僕が答えて言う。「時々完結した曲を弾いたりもしてるけど、こうやってただ漫然と弾いているのが好きなんだよ」

 つまり、それを職業としない人間が、息抜きにひとりでギターを弾いている限り、曲を最初から最後まで完成させなければならないといった努力目標がない。だから、そうした欲求もまた生まれようがないのである。仮に曲を最初から最後まで完全演奏出来るようになったからって何がある? という虚しさもまたよく知っている。アウトプットをきちんと用意できないところに、インプットだけたくさん揃えても、情報が過飽和状態になってフラストレーションが溜まるだけである。そこで、人はバランスを取るためにインプットを塞ぐなり削除するなりして調整する。つまり僕の場合、アドリブだけで弾いていれば決して満足ではないにしても、少なくとも自己完結はしてきたわけである。

 しかし、今回アウトプットが一つ取り付けられた。その自己完結した世界に、ほんの小さいながらも穴が開いたために、僕のそれまでの音楽環境が微妙に変わり始めることになるのである。


2008年01月23日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部