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* 連載フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




397 ベースウーマン養成特別講座(7)−楽器の値段 #1

 マンガは紙と鉛筆とペンとインクがあれば描ける。

 本当は定規やら消しゴムやらスクリーン・トーンやら何やらといった、もっと細々とした七つ道具が必要だったりするのだが、どっちみちそう高価な道具ではない。個人的な趣味で、たとえばペン軸を蒔絵にしたり、ダイヤモンドを埋め込むなどして、果てしなく高価な道具にすることは出来る。しかし、それで他人より優れたマンガが描けるようになるとは限らないばかりか、かえって描きづらいということも起こってくる。

 僕などは、一枚10円前後の上質紙に、一本のペン先をこれ以上描くのは無理と思われるくらいの状態になるまで酷使するので、原稿を描くためのコストはゼロではないが、限りなくそれに近い。文字通りゼロから有を生む仕事になっているわけだが、それだと税務署に申告するための必要経費が捻出出来なくて困るから、値の張るパソコンを買って減価償却することを思いついた……というのは冗談だが、マンガ家は、こと生産するための道具に関する限り、それくらいコストの掛からない稼業であることは間違いない。掛かるとしたら、アシスタント費など別のコストだ。

 だが、音楽の場合はそうはいかない。
 歌手と指揮者を除くすべての音楽家は、持参するしないは別にして楽器を必要とする。そして、楽器は高価だ。もちろん、入門者向けの安価な楽器もある。が、それでもマンガ家の道具と較べたら断然高い。僕の作ったカホンでさえ、数千円の材料費が掛かっている。制作に要した時間と労力を加算したら、それはもう誰が1万円以下で売ろうかというような値段に易々と変わるのである。まして、プロの楽器職人がプロの演奏家のために作る楽器となると、絶対に安かろうはずがない。別にダイヤモンドなどを散りばめていなくとも、である。

 幸いなことにと言おうか、残念なことにと言おうか、僕はプロの音楽家とはほど遠いところにいるただの音楽好きなので、そうした高価な楽器には縁がない、というよりも、つい欲しくなるのであまり近づかないようにしている。そんな自制心の強い(?)僕が唯一例外的に買ってしまったのが、以前にも話題にしたセルマーのリファレンスというアルトサックスだが、やはり素人の僕にも楽器としての質が非常に高いことがわかる。吹きやすいのだ。格段に上手くなった気さえする。つまり、楽器は値段の差が大きく物を言う道具と言える。


2008年03月05日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部