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* 連載フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




401 ベースウーマン養成特別講座(11)−Fの壁 #1

 ところで、肝心のベース・ウーマン養成のほうはどうなったかというと、結論を先に言えば、どうやら本人が早くも挫折したようである。頑張り屋で努力家の彼女だが、自分にも厳しい性格で、“放課後講座”の最後のほうでは上手く弾けない自分に相当苛立っていた。春休みが終わって久しぶりに、ベースの進捗状況を尋ねたら、今は全然練習していないし、そのヒマもないと言う。つまり、“講座”は事実上終わりを告げた。

 それにしても、なぜかくも多くの人が楽器を演奏したいと願っては、早々と挫折するのか? ということを僕なりに考えてみたい。

 まずギターの場合だが、初心者はコードFの壁を越えられなくて投げ出す人が圧倒的に多いように思う。コードFとはC、F、Aの3音、いわゆるドファラの和音だが、このコードを押さえるのがギター初心者には難しい。生まれてこの方一度も使ったことのない指使いを強いられるからだ。そりゃあ指先には鉄の細い弦が食い込んで痛いし、無理な格好をさせられる手の甲は痙(つ)るし、それでもって豊かな音が響けばまだ我慢も出来ようが、実際出てくる音はカスッカスッといった音楽以前のノイズばかりである。

 なぜ? なぜだ? こんなに痛い思いをしているのに何故音が出ない? と、最初に理不尽さが募るコードなのである。その結果挫折してしまうことを音楽業界では「Fの悲劇」と呼んでいる…………という話はついぞ聞いたことがないが、とにかく、このコードFの前にギターを断念した人は今生きている日本人だけでも500万人は下らないのではなかろうかと、何の根拠もない数字だが、そう思うくらいポピュラーなことなのだ。

 ギターを多少なりとも弾ける者にとっては、たかがF、しかし初心者にとっては、されどFなのだが、そのFの壁を突破すれば、次の難関であるB♭のローポジションもクリアできる確率がぐんと高まるはずである。コードFがクリア出来た時点で、指先の皮も一度はマメが出来て破れて丈夫になっているだろうし、指や手首の筋力も増しているだろうからだ。すると、そこからは行く手を阻む小さなバンカーやら池やらがあるにせよ、次の関所までは比較的なだらかな道が続くことになるのだが、しかし……


2008年05月07日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部