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* 連載フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




405 最も向かない職業(3)

「1200票あるんやけど、まずは市会議員、いずれ市長になるつもりはない?」


 幼なじみの話がどうしてそういうところへ飛ぶのか驚いたが、伏線はあった。彼は電話を僕に掛けてくるときはいつも、「庸ちゃんはああだったこうだった」と僕のことを無闇矢鱈と褒めちぎるのだが、この時も「庸ちゃんはいっつも勉強が一番で、アタマが良うて、野球も巧うて、相撲も強うて、鉄棒も巧うて、とにかくスポーツ万能で、いっつも真っ先に学級委員長に選ばれて、僕はほんとに憧れとったんよ」といった調子で始まった。ちなみに、この時の彼は仕事が休みで、酒が少々入っていると言う。おそらく彼は褒め上戸なのだろう。酒が入っているので、余計に拍車がかかっているようだ。話は少々オーバーではあるが、小学生の頃の僕はそうじゃなくもなかったので、「いや、まあ、泳ぎは苦手だったけど」とか何とか、特に否定するでもなく、適当に合いの手を入れながら、それなりに楽しく相手をしていた。

 そのうち、幼なじみはどこをどう勘違いしたのか、「庸ちゃんは正義感も強かったし」と、意外なことを言い始めた。

 この僕が正義感が強い?
 彼の口から出た初めて耳にするフレーズである。いくら褒め上戸の幼なじみでも、それは褒め過ぎだ。もちろん僕だって普通に正義感の持ち合わせが無くもないが、それを外に出すタイプではなかったし、今もそうだ。そうした熱血な行為を彼の前で見せた記憶はない。彼の記憶違いとしか思えない。しかし、彼はあくまで、そう主張する。

 その後、幼なじみのタイムトラベルは中学時代へと進んだ。
 すると、「あの何でも一番で、僕の憧れだった庸ちゃんはいったいどうしたの?」と、突然責め口調へギアが入った。僕は戸惑いつつ、「な、何が?」と返すと、「僕はよう覚えとるよ、庸ちゃんの成績が100番より下やったやん。何でやの?」と言う。「いや、僕は勉強が嫌いで全然しなかったから、自然落下していったけど、でも、そんなに悪くはなかったよ。確か10番台だったと……」などと返すが、彼は「僕はなんであの庸ちゃんが100番以下なんか、もうガッカリしたよ」と、アルコールのせいか、僕の話はあまり聞こえていないようである。そろそろ電話の切り時かなと思い、そのキッカケを探し始めたところ、彼は「1200票あるんやけど」と、冒頭の話を始めた。


2008年07月02日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部