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* 連載フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




411 閑中忙アリ(5)〜そうだ、アニメを作ろう!#4

 いくらか迷った挙げ句、ICレコーダーなるものを買ってみた。

「迷った」というのは、録音機ならば買ってほとんど使ったことのない新品同様のカセットレコーダーや、音楽を一人で作って遊ぶのに便利なこれまた新品同然の小型MTRなど持っていないわけではなかったからだ。もしかしたら、この遊びも早々に飽きる可能性だって否定できない。また抽斗の中にガラクタを死蔵してしまうことにならぬよう、まずはそれらを試しに使ってみて生録が「面白い」遊びかどうかをまず判断してからでも遅くはないのではないかと「迷った」のだ。

 だが、それらの既存品は、外で持ち歩くにはあまりにも図体がデカ過ぎた。カセットレコーダーは当然ながらカセットテープよりはずっと大きく、MTRはコンビニ弁当くらいの大きさがある。自宅の中ならいざ知らず、こんなものを白日の下に晒しながら何やらわけのわからない録音をしていたら、まず間違いなく周囲の注目を浴び、訝しく思われてしまうに違いない。しかも僕はチョンマゲだし、コワモテだし、その上、老眼のせいで遠近用のサングラスをしている。自分ではわからないが、挙動不審なところもあるようだし、もしかしたら目には狂気が走っているかもしれない。要するに、いわゆる平均的な人に較べたら、何の仕事をしているんだかよくわからない出来れば近づかないほうが無難な得体の知れない人と見られなくもない。

 そんな怪しい男が何やらこそこそしながらいかがわしいものを盗み録りしているようだと、誰かが勘ぐって警察に通報したとする。となると、警官がパトカーとか自転車でやってくるから、僕は関わり合いを避けるために慌てて録音機をバッグにしまい、そそくさとその場を去ろうとするだろう。ところが、警官にはそれがいかにも挙動不審と映ってしまう。結果、「あいつだ!」とばかりに猛然と追いかけてくることになる。子供の頃から意味もなく警官が怖い僕は、頭が真っ白になりながら一段と逃げ足を早める。すると、たまたま通りがかった正義感の強い屈強な男が、警官から必死で逃げているらしい僕を瞬時に何かの犯人と判断し、ものすごい勢いで追いかけてくる。僕はひぃひぃ言いながら、あらん限りの力で走るのだが、フィットネスクラブに通っているとはいえ所詮はデスクワーク中心のマンガ家、あえなく腕を掴まれ、路上にぺしっと押し倒される。そこへ警官が駆けつけ、僕は後ろ手に手錠を掛けられてしまうのだ。僕は叫ぶ、


「僕は何もやっていない! 僕は何もやっていない!」



 ……というようなことにはならないだろうが、僕は無駄なリスクを避け、初代iPod nanoと同じくらいのサイズのICレコーダー(オリンパス製)を買ったのだった。




※iPod nanoは、米国および他の国々で登録されたApple Inc.の商標です。


2008年10月01日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部