* 連載フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number


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421 造形の授業(5)〜フィギア制作奮闘記 #4〜

 ドレスを着せ、ロココ特有の巻き髪だらけのカツラも被せ、手首を作り、靴も履かせた。そしてオーブンで焼いた。

 ちなみにこの粘土は、フタル酸エステルを可塑剤とした塩化ビニール樹脂を主材としているそうで、そのフタル酸なんたらかんたらというのは、立派な環境ホルモン問題の主役の一つなのだそうだ。だからかどうか、オーブンで焼く際に、いかにもケミカルな臭いのするガスが出る。これは有毒だそうだ。焦がせば更に有毒度が増すという。どの程度有毒なのかはわからないが、この数ヶ月、このガスを週に一度吸い続けてきた僕が未だ何事もなくピンピンして生きているのだから、死ぬのぶっ倒れるのといったレベルの毒ではなさそうである。

 とはいえ、体に宜しかろうはずもないから、部屋の換気は必須である。講義室には換気扇などないため、ドアを開け、教室の窓も廊下の窓も開けておくことにしている。しかし、それくらいではガスは丁度僕のいる教壇のあたりに立ち籠めることになる。電子レンジが教壇右横のテーブルに置かれているからだ。しかも、授業中に焼かれるプラスチック粘土が一つや二つではない。午前午後、昼食時間を除く約6時間、多いときには、その数二桁を超える学生たちが入れ替わり立ち替わり自作の塑像を焼きに来るのである。その間、どこぞに避難しない限り、延々と間接喫煙ならぬ間接喫ガスを余儀なくされるのである。お陰で授業の終わる午後4時近くにもなると、僕の鼻の粘膜にはガスの臭いが張り付いてしまっているので、そのうち僕は体に細胞変化が起こって怪獣になってしまうかもしれない。

 そんなこんなの努力の甲斐あって、僕のマドモアゼル・モーツァルトはなんとか立ち居姿を披露出来るまでになった。


2009年3月4日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部