* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers
東京レトロフォーカス


  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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建築物の撮影でもっとも嫌われるのは「直線が歪んで写る」歪曲収差だ。レトロフォーカス形の広角レンズでこれを補正するのは難しいのだが、ミール20はこのようにピシっと気持ちの良い絵が撮れる。1960年代に設計されたレンズとしては驚異的。ただし解像力やコントラストはそれほどでもなく、特に画面の四隅は開放から2段程度絞っても絵が荒れる。画面右下のモヤモヤはフレア。赤煉瓦の建物は『東京国立近代美術館工芸館』で、戦前は旧陸軍近衛師団の司令部庁舎として使われた。明治43年の竣工、設計は旧陸軍技師の田村鎮という。アプローチ真上の三角屋根に白い円形の造作がみえるが、かつてここには菊の御紋が嵌め込まれていたそうだ。
data:Fujica ST605 + KMZ MC MIR-20M 20mmF3.5  1/30sec. F=5.6+1/2 FUJICOLOR SUPERIA100



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いつもの中山のクドイ文章はともかく、あの可愛い娘は誰? と気になっていた読者も多いと思うので、被写体をご紹介しよう。脊山麻理子ちゃんは某大学の環境情報学部に通うプロの学生さん。高校時代はモデルとして活躍、映画『天然少女 萬』にも出演していた。女優への道もひらけていたのだが「なんか仕事が楽しくなくなって」進学を機にタレント活動をやめてしまったのだそうだ。今は友達とデジカメで撮った写真で雑誌を作っている。近々この連載にも彼女がクラシックカメラで撮った作品とコラムを掲載する予定。乞うご期待!
data:Fujica ST605 + KMZ MC MIR-20M 20mmF3.5  1/30sec. F=5.6+1/2 FUJICOLOR SUPERIA100



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●今週のお題:
『KMZ(クラスノゴルスク)・ミール20M』
本文を読むといかにもコピー物みたいだけど、これは旧ソ連のオリジナル設計による超広角レンズ。構成は8群9枚だから、旧東独カールツァイス・イエナ社の『フレクトゴン20mm』をお手本に設計したのかもしれない。製造はモスクワ近郊のKMZ(クラスノゴルスク機械工場)。外観はご覧のとおり巨大な前玉が特長で、これが一種異様な存在感を醸しだす。ただし高屈折ガラスや非球面レンズを駆使する現代のレンズなら、おなじスペックでもずっと小さくできるだろう。特大ピントリングのヘリコイドは感触良好。
data:Nikon F90 + Nikkor 50mmF1.2S  1/500sec. F=1.2 FUJICHROME ASTIA(RAP)

模倣の赤い星 #1

 ちょっと前に、TVのニュース番組で「アジア産コピー商品撲滅運動」というような特集があった。
 画面には東南アジア某国で有名ブランドのコピー時計がローラー車で轢き潰される光景が紹介され、そっち方面のビジネスもたいへんだなあ、などと考えたものなのだ。
 さいわい日本にはコピーされるようなブランドは少ないから、これは対岸の火事だと思うとさにあらず。お隣の大国では日本のメーカーとまったくおなじカタチのバイクが、かなり紛らわしい商標で堂々と売られていたりするのである。
 こういうコピー物品がなぜ問題なのかというと、それはデザインや開発にかかる費用がゼロに等しいので、安く売られてオリジナルの市場を奪うからだ。ホンモノより高いパチモノ・ロレックスなんて、誰も買わないもんな。
 だから資本主義の社会では、特許とか意匠登録などでオリジネーターの権利が護られることになっている。他人と違う能力を持ったひとは、その能力によって対価を得られる仕組みだから、これは当然のことと考えられてきた。安易な真似っこはケシカラヌ、というわけだ。
 手元の資料を繰ると、こういう権利を保護する仕組みが立法化されたのは、15世紀後半のヴェネチア共和国における『発明者条例』が最初の例とされている。現在の特許制度は17世紀に英国でつくられた法律がもとになっていて、その後は産業革命などの波に乗って世界中にひろまったらしい。
 日本では1885年(明治18年)に西欧諸国のそれを範とする『専売特許条例』が制定された、とある。
 近代に入ってからは『知的所有権』があらゆるビジネスを動かすようになり、今では音楽もゲームソフトも、果ては『かに道楽』の動く看板もオリジナル性が高いとして模倣が許されないことになっている。

 物真似だけならサルでもできる。サルと違う人類はアタマを捻ってアイデア盗用を防ぐシステムを作ってきたのだけど、それは資本主義の(というか、市場経済の)安定をはかるシステムでもあった。
 ところが20世紀前半、この社会システムを真っ向から否定する国家が生まれた。赤い国旗にカマと金槌を戴く巨大国家、ソヴィエト社会主義連邦である。

●作例モデル:脊山麻理子(せやま・まりこ)


2002年05月15日掲載

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