* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers
東京レトロフォーカス


  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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今週は元気印の麻理子ちゃん。モデル業はブランクがあるはずなのに、レンズを向ければこちらのレリーズのタイミングをきちんと読んでくる。ところで、今回のミールの作例はすべてネガフイルムで撮っている。その理由は次回に。
data:Fujica ST605 + KMZ MC MIR-20M 20mmF3.5  1/30sec. F=5.6 FUJICOLOR SUPERIA100



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ミール20はお手軽価格の高性能レンズだが、使いこなしにはちょっとコツがいる。超広角の強烈なパース(遠近感)を意識して視点を決めないと建物は不自然に傾くし、96度という画角は画面内に光源を拾いやすい。よく「ロシア物は逆光時に弱く、フレアやゴーストが防げない」といわれるが、僕が所有する物品はそれほどひどくない。とはいえやはり注意は必要で、前回の作例でも指摘した画面隅のモヤモヤ(この作例では下側の両端)は絞り込んでもあまり改善されない。まあこのあたりは個体差もあるので、断定はできないけど。
data:Fujica ST605 + KMZ MC MIR-20M 20mmF3.5  1/30sec. F=5.6+1/2 FUJICOLOR SUPERIA100



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●今週のお題:
『KMZ(クラスノゴルスク)・ミール20M』
ミール20Mの背面。型式名の終わりに付くMは『M42スクリューマウント仕様』を意味する。このマウントは昔の一眼レフの汎用規格で、多くのメーカーが採用していた。レンズ最後部には付属のねじ込み式フィルターを装着できる。ところでロシアカメラ研究者の間では、このフィルターが光学系の一部か否かで議論があるようだ。フィルターは確かに単純な平面ガラスではないが、付けても外しても描写にそれほど差はない。マウント内側にはボディ側で絞り込みを行うための連動ピンがある。
※デジタルカメラで撮影

模倣の赤い星 #2

 社会主義のメソッドをすごく単純化すると、「私有財産制の廃止、生産手段および財産の共有・共同管理」ということになる。そのココロは、つまり「皆が平等な社会づくり」だろう。
 このイデオロギーは資本主義の矛盾を否定するところからはじまっているから、他人より広い家に住むことはもちろん、京都から朝堀りのタケノコを空輸で取り寄せるとか、世界限定○○台のライカM6をゲットするとか、そういう「お金で買えるシアワセ」を求めてはいけないことになっている。誰もがなるべくおなじ条件で働き、おんなじ報酬を得れば社会は安定する。
 企業はすべて国有だから、企業間の競争はない。社運を賭けた新製品開発で連夜の残業、なんてことはあり得ないから、工業製品の開発は(軍需産業を除いて)必要充分なペースで進む。必要最低限のペースでしか進まない、という言い方もあるけど。
 もちろん社会を発展させる発明は奨励されるだろう。でもそれは国家のものになるはずだ。知的財産も社会全体で共有して国民に還元するのが国家の理念なのだから。
 そこには「偽物、マガイモノ、コピー商品」という概念そのものがなかったはずなのだ。

 前にも書いたけど、さいきん日本ではロシア(旧ソ連)製のカメラやレンズが人気を集めている。それらが新聞や雑誌でとりあげられるとき、必ず使われるのが「ロシアカメラは西側製品のコピーが多い」という文句で、これに「造りは雑で故障も多いけど、驚くほど安価」というフレーズが続く。
 果たして本当にそうなのだろうか?
 いま僕の手元には10本足らずの旧ソ連およびロシア製レンズ、おなじく3台のカメラボディがあるけど、「西側製品完全コピー!」と胸を張っていえるものはひとつもない。胸を張る必要もないか。
 よく言われているようなパチモノ完コピ製品は、若者に人気のロモLC-A(日本のコシナ製がオリジナル)とかキエフ35(おなじく、独ミノックス製)とか、あとは数えるほどしかないんじゃないか。付け加えておくと、こうした製品はソ連邦が崩壊しつつある頃、外貨稼ぎのためにつくったものが多いのだ。
 だからといって「ロシア製品コピー説」を全否定するわけではない。アイデアのイタダキはそれこそ、ごまんとある。ただ、そういう模倣も、個人の知的発想を社会で共有する彼等にとっては、たんなる様式や流行の借用みたいに考えられたのではないか。
 もしかするとそれは、明治政府の肝煎りで造られた赤煉瓦の建築みたいなものかもしれないのだ。

●作例モデル:脊山麻理子(せやま・まりこ)


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