* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers
東京レトロフォーカス


  文/中山慶太 --->Back Number


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ミールの低めのコントラスト感を活かすには、低感度のネガフィルムまたはモノクロがベストマッチ。現代のハイコントラストレンズとは異質の軟らかい絵が撮れる。逆にこの性質を補うならリバーサルを選ぶという手がある。この作例では東欧の光をイメージして電子暗室で色を抜き、コントラストも少しいじってみた。
data:Fujica ST605 + KMZ MC MIR-20M 20mmF3.5  1/30sec. F=5.61/2 FUJICOLOR SUPERIA100



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こちらは完全に色を抜いた後に調色、部分的にソフト効果を加えている。通常の暗室作業でもそうだけど、ここまでやってしまうと撮影レンズの微妙な性質はほとんど残らない。それなら何で撮っても一緒か? 確かにそうなんだけど、ミールというレンズがこういう写真を撮らせたともいえる。被写体との距離は約50cm。背景はもうすこしシンプルにまとめるべき。
data:Fujica ST605 + KMZ MC MIR-20M 20mmF3.5  1/30sec. F=5.6+1/2 FUJICOLOR SUPERIA100



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●今週のお題:
『KMZ(クラスノゴルスク)・ミール20M』
今回、ミール20Mを装着したボディは『フジカST605』。70年代半ばに発売された小型軽量マニュアル一眼レフで、フジカSLR最後のM42マウント機(ファインダー内にシャッタースピード表示を加えたST605IIは小改良版)となった。小型化の弊害になりがちなミラーボックスの内面反射にもじゅうぶんな対策が施され、旧いM42レンズのボディに最適だ。低廉な入門機ゆえ、シャッターの高速側は1/700秒までだけど、動体を追わない僕はあまり困ったことがない。ファインダーもこの時代の平均以上に明るく、唯一の不満は巻き上げ角が大きすぎる(180度以上!)ところか。写真は2台所有するうちのひとつ。この機体はレリーズストロークの遊びがほとんどなく、指先のわずかな動きにシャッターが反応する。
data:Nikon F90 + Nikkor 50mmF1.2  1/500sec. F=1.4 FUJICHROME ASTIA (RAP)

模倣の赤い星 #3

 社会主義国家の壮大な実験が終わりを告げた先の世紀末、世界の主要な写真機市場に大量の『旧東側カメラ・レンズ』が流出した。
 それまで鉄のカーテンの向こうにあって、存在のみが確認されていた幻のカメラなどがトツゼン現れたものだから、写真愛好家たちは戸惑い、最初は遠巻きに観ていたものだった。  混乱のなか、その実体を解明しようとする熱心な研究家たちが登場する。彼等の努力もむなしく、製造元からの公式資料は限られており、実体は杳(よう)として知れない。怪しげな噂や根拠のない風説も流布され、それが独り歩きしていた時期もある。
 幸い混乱は収束し、今では日本をはじめ世界の研究家がインターネット上にきちんとした成果を発表している。旧ソ連製カメラの発達の歴史や成り立ちは、こうしたWebサイトを渡り歩けばほとんど理解できるだろう。ここでは引き写しの愚を避けて、ちょっと別の話をしておきたい。
 それは、ロシアカメラでよく言われる「粗雑な作り、劣悪な操作感」についてだ。

 確かに旧東側の工業製品は、西側のそれのようなサービス精神が希薄である。精密な機械部品をマイスターや熟練工たちが組み上げた、あの思わずうっとりするような作動感、などというものはない。
 また、痒いところに手が届くような機構の工夫なども期待薄だ。おまけに製造の公差(バラつきですね)も西側製品に比べて大きい。だからおなじ機種でも操作感覚や写りがけっこう違っていたりする。

 それでも写真は撮れる。

 冬の寒い朝、ちょっと旧い国産機と旧ソ連製カメラを持って出かけてみる。手袋に包まれた指先で、確実な操作ができるのはどちらか。もしも低温で電池が切れて露出計が動かないとき、さほど失敗なく撮影ができるのはどちらのカメラに慣れた人間か。そして、写真の原理そのものを操作のステップとして要求する無骨な機械と、そういう理屈を省いて純粋に撮影行為に入っていける洗練されたカメラの違いを肌で感じたとき、自分はどちらを選ぶだろう。
 東西を隔てた壁が崩れる前は、そんなことで悩むひとはほとんどいなかったのだ。

(この項終わり:次回よりライカM3編)

●作例モデル:脊山麻理子


2002年06月05日掲載

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