* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers
東京レトロフォーカス


  文/中山慶太 --->Back Number


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手ブレと被写体ブレの合わせ技(笑)。大きな木製のベンチはれっきとした工芸館の展示物だけど、誰でも座っていいことになっている。こういう展示は良いですね。ところでこの『国立近代美術館・工芸館』の建物は戦後20年以上も荒れ果てたままで放置され、改修を受けて現在の姿になった。外見から想像するほど様式感のある内装ではないのがちょっと残念、ただしデジカメ以外なら撮影もオッケーで、これは有り難い。写真を撮る場合はいちおう受付で断って、周囲の邪魔にならないようにしましょう。
data:Leica M3 + Summilux 50mmF1.4  1/8sec. F=1.4 FUJICHROME ASTIA(RAP)



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すぐに周囲に溶け込む麻理子ちゃん。RF(レンジファインダー)やVF(ビューファインダー)の美点は、明るく澄み切ったファインダーのなかに浮かぶ視野枠で構図を決め、画面を“切り取れる”ところだ。これに慣れてしまうと、画面周囲の様子が確認できない一眼レフが不便に感じる。ただしRFやVFでは絞りでボケが変化する様子は観察できないし、パララックス(視差)の問題もある。単純に優劣はつけられないけど、個人的にRF機は奥が深い、釣りでいえば「フナにはじまり、フナに終わる」みたいな存在だと思う。
data:Leica M3 + Summilux 50mmF1.4  1/8sec. F=1.4 FUJICHROME ASTIA(RAP)



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●今週のお題:
『ライカM3 & ズミルクス 50mm』
M型ライカのなかでもM3の人気が高いのは、ファインダーにいちばんお金がかかっているからだという。確かに資料をみると構成するパーツの数はM3が最も多く、組み立てや調整が面倒そうだ。レンズ交換時には焦点距離に対応したブライトフレーム(視野枠)がファインダー内に浮かび上がるのだが、M3は広角側のフレームを内蔵しておらず、これが実用機としてはネックである。ただしファインダー倍率は歴代のMでもっとも大きく、約0.95倍。連動距離計は倍率が高いほど測距精度が上がるので、望遠系レンズでの撮影に適したボディといえる。
data:Nikon F90 + Micro Nikkor 105mmF2.8  1/60sec. F=5.6 FUJICHROME ASTIA(RAP)

ライカ、行軍するメカニズム #2

 20世紀後半、RF(レンジファインダー)機はいちど絶滅の危機に瀕した。
 それは「撮影レンズを通して被写体を確認できる」一眼レフ機が台頭したためといわれている。確かにそういう面もあるだろう。
 でも、多くのメーカーがRF機を見限ったほんとうの理由は、パーツの製造や組み立て調整に手間のかかるファインダー部が大量生産に向かないからだと思う。世間には一眼レフの方が高級なメカと思われているみたいだけど、実はレンジファインダー、それも実像式のものは一眼レフの遠くおよばぬ精密な機構なのだ。
 おまけにこのタイプの宿命として、望遠レンズでのピント精度が保証できないし、近接撮影にも対応が難しい。一眼レフはどちらにも対応できるから、交換レンズをずらりと揃えればビジネスチャンスも拡大する。
 またRF機は絞りによるボケの変化がファインダーで確認できず、ピントは画面中央の狭い範囲でしか合わせられないのも不便だ。そういうもろもろの理由で、RF機は過去の遺物となった。ライカを除いて。
 ところが先の世紀末、日本のカメラメーカーは続々とレンジファインダーの新製品を送りだした。一眼レフがほぼ完全な自動化を果たし、デジタルも急速に普及する時代に。
 いったいどうして?

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「誰かがどこかで書いてたぞ。ライカを使う理由って、ただ単にカッコイイからだって」
「そういうひとは、首からカメラを下げた自分を鏡に映したことがないんだよ」
「お前、あるのか」
「ないない。ないよ。でも恥ずかしいだろ、大のオトナが開き直って、本音を書きちらかして逃げるのって」
「今、“ホンネ”って言ったぞ。けっきょくお前もおなじじゃないのか」
「僕は持ち歩くなら、ああいう偉そうなブランド品より他人が知らないカメラの方がいい」
「それはスノッブっていうんだ。根は一緒だぞ。で、さっきの質問の続きだけど、どうなんだ」
「ライカを使う理由だっけ? そうだなあ、重くてフィルムが詰めにくくて、(被写体に)寄れないからかな」
「俺が言った欠点そのままじゃないか。お前、俺のこと馬鹿にしてるのか」
「だって本当だもの。そういう条件が苦痛なら、一眼レフの軽いやつにズームをつけて使うよ」
「長所を活かして使うのがお前のカメラ選びじゃないのか」
「欠点だと思うからいけないんだ。撮影にそういう条件っていうか、制限があると思えばいいじゃないか。最短撮影距離が一眼レフより長いなら、寄らずに別の撮り方を考えればいいだろう? どっちにしたって寄れる限界はあるんだから」
「……フィルムが詰めにくいのは不便だろう」
「君がM6でいつも文句言ってる通りだよ。いちいち底蓋を外すのは確かに変だよね。僕のM3はスプールがそっくり外れてさらに面倒だけど、まあそれも儀式というか、カメラが撮影中にちょっとしたブレイクを用意してくれてると思えばいい」
「なんか、禅問答みたいだぞ。なんでカメラを使うのに、わざわざそんな理屈をつけないといけないんだ」
「他人がライカを使う理由がそんなに知りたいの? それじゃあこういうのはどうだろう。ライカを使うと、被写体にピンと背筋を伸ばして向かう気分になる。たった今思いついたんだけどさ」

●作例モデル:脊山麻理子


2002年06月19日掲載

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