* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers
東京レトロフォーカス


  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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今月はドイツ製コンパクト機による競作。麻理子ちゃんの愛機レチナに対抗して、僕の作例はすべてウェルチーニで撮影した。戦前のカメラなのでレンズはモノコート(単層コーティング)、そのわりにカラーの発色は悪くないのだが、油絵的にこってりと派手な色をのせるレチナに比べるといささか水彩画風である。光の条件さえ整えば流石のシュナイダーレンズ。コントラストもピントも時代を感じさせない描写となる。
Welta Weltini II + Schneider Xenar 50mmF2.8 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:1/25sec. F=5.6



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●プチ連載:
『マリコのphoto diary #5』
潮風と太陽の熱で色あせた、砂浜を囲む壁と空はARTだなって思う。意図せずしてできたきれいなもの。(撮影:脊山麻理子)
Retina IIIc + Rodenstock Heligon 50mmF2 FUJICOLOR SUPERIA400 Exposure Data:Unknown



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●今週のお題:
『ウェルタ ウェルチーニ2(クセナー50mm)』
知られざるドイツカメラの逸品。第二次大戦の直前、のちの東ドイツ領となるフライタルに本拠を置くウェルタ社で製造された。原型となったオリジナル・ウェルチーニの巻き上げノブを底面に移し、軍艦部を一体プレスの流麗なカバーで覆ったことで、現代でも通用する個性的かつモダンな造形を得た。一眼式レンジファインダーの接眼部は通常と逆の背面右側にある。各部の工作はたいへん緻密、特にレンズ周りの造作と操作感覚は同時代のライカをも確実に凌ぐ。ただし使いにくさもトップクラス、この話は次号にて。
Nikon FE2 + Micro Nikkor 105mmF2.8 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:1/15sec. F=3.5

 国民カメラ創世記 #1

 例によって大袈裟なタイトルをつけてしまったけど、今回は“ひとりに一台、国民カメラ”のお話。
 昔々ある国の独裁者が「すべての国民に自家用車を」というスローガンのもとに虫型のクルマを開発させたのは、別の国の首相が掲げた所得倍増計画よりもずっと有名なハナシである。
 この場合、とりあえず所得が倍に増えた方が好きなものが買えてクルマ嫌いのひとにもウケるのでは、などと突っ込んではいけない。今ではありがたみが薄れたとはいえ、クルマはもっともわかりやすい豊かさの象徴だったのだ。半世紀前に個人でクルマを所有するということは、今の僕らが自家用飛行機を持つようなものだった。読者でお持ちの方、いないでしょうね。
 それに比べてカメラは不要不急度が高いというか、とりあえず無くても生活に支障をきたさない。だからクルマなどより余程ゼイタク品といえるのだが、そういう物品を何十台も所有するコレクターが世界一多いであろう現代の日本が世界一豊かな国か否か、というのはまた別の問題だ。
 しかもそのカメラが国民ひとり一台以上の割合で普及したのは、『写ルンです』を発明した日本が史上初だったろう。いや、あれはあくまでレンズ付きフィルムだった。
 それはさておき、カメラのような趣味性の高い物品がすべてのご家庭に行き渡る社会は、半世紀前には世界中のどの国でも実現できていなかった。だからこれが実現した二十世紀後半は、“国民カメラ創世記”が目撃された時代といえるのだった。
 では、国民カメラの条件を勝手に考えてみよう。第一に、それは誰もが無理なく入手できる価格で提供されなければならない。次に、誰もが簡単に失敗のない写真が撮れるような機能を備えていること。そして最後に(ここがいちばん重要なのだが)、自国内の工場で一貫した生産が行われ、設計・製造・販売のあらゆるプロセスが自国民の生活向上に役立つこと。これに市場で長きにわたって陳腐化しないような意匠があれば完璧といえるだろう。
 こうやって条件を抜き出すとあらためてVWビートルというクルマの偉大さを実感するのだが、カメラでこれを成し遂げた機種はそれほど多くない。それはたぶん、カメラという物品の特殊事情によるものだ。

●作例モデル:脊山麻理子


2002年08月07日掲載

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