* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers
東京レトロフォーカス


  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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ウェルチーニのレンズは逆光に弱く、こういう条件だとコントラストが出ない。これは麻理子ちゃんの愛機レチナと対照的で、似たような条件で撮り比べると愕然とする。両者には15年の隔たりがあり、この間にレンズの多層コーティング技術が確立されたのだ。現代では逆光に強いレンズを探すのは難しくないから、このカメラではローコントラストの絵づくりを楽しむのが健全かも。
Welta Weltini II + Schneider Xenar 50mmF2.8 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:1/250sec. F=5.6



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●プチ連載
『マリコのphoto diary #6』
カメラをのぞいてたら逆に私をのぞいている男の子がいた!(良い意味で)悪がきそうなこの子、すごくかわいい!(撮影:脊山麻理子)
Retina IIIc + Rodenstock Heligon 50mmF2 FUJICOLOR SUPERIA400 Exposure Data:Unknown



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●今週のお題:
『ウェルタ ウェルチーニ2(クセナー50mm)』
ウェルチーニ2の最大の弱点はフィルム給送部にあって、これがために実用機にならない。巻き上げとシャッターチャージが非連動なのは良いとして、レリーズ毎に底面の送りボタンを押して巻き上げる方式(二重露光防止のため?)は撮影のモチベーションを削ぐ。巻き上げも神経質でコマ間はバラつくしパーフォレーションは削るし、巻き戻しは慎重にやらないとフィルムがちぎれる。気難しいというか、ハッキリ言って完成度は低いのだけど、そこが貴族的な魅力につながる不思議なカメラである。軍幹部上面のプレートは被写界深度表。
Nikon FE2 + Micro Nikkor 105mmF2.8 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:1/15sec. F=3.5

 国民カメラ創世記 #2

 フォルクスカメラ、つまり国民写真機は自国民の頭脳を結集して開発され、自国民の手によって製造販売されなければならない。これは国家の自給自足度を高めるというより、産業の振興によって右肩上がりの経済を維持するという工業国家の理想、もしくは幻想を満たすためだ。
 つまり、外国の工場で安価な労働力を使って生産されたカメラをどれだけ大量に輸入供給しても、それは国民カメラになり得ない。その手法では自国産業の振興よりも、市場競争を前提とする企業の論理が優先されてしまう。隣の村の野菜が安いといってみんながそっちを買うと、こっちの村の畑はどうなる?
 だから国民カメラは工業国家が発展する過程で生じる幻想に過ぎない。なぜって、国家の目論見どおりにことが運べば、やがて生産コストが上昇して安価な製品が供給できなくなる。それが資本主義のお約束である。いやそれ以前に製品が国民すべてにゆき渡って、購買意欲が減退するかもしれない。クルマと違って、カメラはそうやすやすと消費されるものではないからだ。
 やすやすと消費されないカメラの消費を促進するためには、消費者の耳目を惹きつける付加価値を加え続けるしかない。だからカメラは機能の拡充を続け、取説は増ページを続け、さらに生産システムも見直しを受けて高機能化と低価格化が進む。こうなると“ひとりに一台”などとケチなことを言わず、二台三台の買い増し需要が見込めるかもしれない。そういう際限ない進化の過程で、シンプルで低廉を旨とした国民カメラは成り立ちを変えた。
 どう変わったのか、という話をする前に、今月登場する二台のカメラを比較してみよう。
 最初の一台はドイツのウェルタ社が1940年前後に生産したウェルチーニ2(正しくは“ヴェルタ”の“ヴェルチーニ”か)。次の一台は、1950年代の半ばに西側ドイツで生産されたレチナ・シリーズ3。どちらも畳めばポケットに入るお洒落な蛇腹カメラ * である。

●作例モデル:脊山麻理子

*注:前の『ジャバラの時代』の項でも触れたけど、折り畳み式の蛇腹カメラは中判機が先行し、35mmフィルムを使うコンパクト機はずっと後になって普及した。これはそもそも35mmカメラではレンズの繰り出し量が小さく、わざわざ折り畳まなくても充分に小さかったためと思われる。なお上記のウェルチーニはバネ仕掛けを持つスプリングカメラだが、レチナは前蓋の開閉を人力で行うフォールディングカメラである。


2002年08月14日掲載

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