* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers
東京レトロフォーカス


  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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シュナイダー・クセナーを絞り開放で撮る。こういう斜光の条件では程良いコントラストが得られ、カラーバランスも悪くない。絞り開放ではさぞかし甘い絵になると思いきや、ピントの合った部分はけっこうシャープで線が細い。背景のボケはたいへん素直で、この点は同時代のテッサーを凌ぐのではないか。昔のレンズは妙なクセがあった方が面白いとは思うのだけど、こういう絵が撮れるとつい満足してしまう。まだまだ修行が足りません。
Welta Weltini II + Schneider Xenar 50mmF2.8 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:1/250sec. F=2.8



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●プチ連載:
『マリコのphoto diary #8』
ピンクの自転車が寂しそうに誰かを待ってた、気がする。ピンクの自転車が私に言ってた、「でも私、待ってる姿も絵になるでしょ☆」って。 (撮影:脊山麻理子)
Retina IIIc + Rodenstock Heligon 50mmF2 FUJICOLOR SUPERIA400 Exposure Data:Unknown



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●今週のお題:
『レチナIIIc(ヘリゴン50mm)』
レチナのシリーズ3はそれまでの直線的な造形を捨て、ボディ各部はオーガニックな曲線と曲面で構成される。底面の巻き上げレバーが見えるこの角度は僕がもっとも好きなアングル。レンズ下部の外周に刻まれた数値は光の絶対値を示すLV(ライトバリュー)値で、軍艦部の露出計から読み取った数値をここに移せば、シャッタースピードと絞り値の組み合わせを適正露出の範囲で選べる(手動プログラム露出のようなもの)。裏蓋開放機構は他に類をみない方式、誤操作の心配はほとんどない。
Nikon FE2 + Micro Nikkor 105mmF2.8 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:1/15sec. F=3.5

 国民カメラ創世記 #4

 ウェルチーニ2とレチナ3。両者の生産年はおよそ15年ほど離れている。この間に第二次世界大戦が勃発し、ドイツは敗戦国となり、貴族はわずかに残った特権を失い、国土は東西に分割された。
 レチナの生産拠点はシュツットガルトに置かれていたため、戦後は西側企業となり、途絶えていた米国とのビジネスも再開することができた。
 対するウェルタ社の本拠フライタルは戦後に東側領土となり、同社の技術陣は引き続きユニークな製品を企画するのだが(有名なパールカラーのウォレットカメラ『ペンティ』はウェルタの設計による)、企業は時を経ずして人民公社に併合される*。実はこの人民公社で設計製造されたカメラこそ真の国民カメラであったようにも思うけれど、その話はまた稿を改めて記そう。
 ウェルチーニとレチナは、ブランドの盛衰もかなり異なる。上流階級の玩具として洒落たからくりを追求したウェルタ社はしだいに個性を失い、レチナは高級大衆カメラとして一世を風靡したものの、一眼レフ時代の市場競争に破れて潔くブランドを閉じた。両者の目指したものが“シンプルで低廉を旨とする”国民カメラだったわけではないかもしれないけれど、両者が輝いていた時代、カメラもまた国民の豊かさの象徴だった。
 時代は下り、今では誰もが失敗なく撮れるカメラがどこででも手に入る。グローバル化が進む時代ゆえ、もはやそれらの原産国を追うことも容易でない。それはかつての国民カメラとは違う存在かもしれないけれど、写真機の進化のカタチとしては健全なのだろう。そもそもカメラは国威を発揚するためでなく、また機械そのものを愛(め)でる趣味のためでもなく、撮影行為そのものを楽しむ健全な趣味の道具として生まれたはずなのだ。
 僕らはもう、充分にそのことを知っているはずである。

(この項終わり:次回は麗しのチェコ製二眼レフ『フレクサレット』編)

●作例モデル:脊山麻理子

*注:戦後の東ドイツは領土内に光学機器生産の中心地であったドレスデンを擁し、この近隣に本拠を置いたメーカーを統合して『ペンタコン人民公社』を発足させる。かのツァイス・イコンをはじめ、ウェルタやバルダ、KWなどもこの公社に併合された。ペンタコンは35mm一眼レフのプラクチカシリーズで名を馳せたが、東西ドイツの統合とともに消滅した。


2002年08月28日掲載

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