* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers
東京レトロフォーカス


  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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チェコのアールヌーボー建築、ではなくてこれはパリのオルセー美術館で撮った一枚。19世紀末に花開いたアールヌーボーの様式はこういう鍛鉄工芸に代表されるもので、同様の装飾はプラハの街でも観ることができる。背景の金網はすこしでも歪んで写ると気持ちが悪いものだけど、フレクサレットは歪曲収差のまったくない自然な描写を見せる。コントラストの高いリバーサルで潰れがちな暗部のトーンも豊富、アスティアのフィルム上にはさらに豊かな階調が詰まっている。
Meopta Flexaret VI + Belar 80mmF3.5 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:1/50sec. F=5.6



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夏休み中の麻理子ちゃんに替わって、久し振りに登場のアレッサンドラ。初めて会ったときはまだ十代の娘だった彼女もそろそろ二十代の半ば、でも子鹿のような容姿は変わらない。ところで今週のふたつの作例、どちらも全体にハレっぽいのは僕が所有するこの機体だけの症状で、フレクサレットVIのレンズは現代でも通用する優れた描写力を持つ。このハレーションの原因は解明済み、次号以降の連載で書きます。
Meopta Flexaret VI + Belar 80mmF3.5 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:1/25sec. F=5.6



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●今週のお題:
『フレクサレット二眼レフ』
今週と来週は2002年夏、フランス・イタリア取材の画像を掲載。今回の旅はクラシックなレンジファインダー機と二眼レフを携行したのだけど、これがなかなか絶妙なコンビであった。特にフレクサレットは旅先で人気があり、多くの人に話しかけられた。シックな外装色はパリのカフェによく似合う。
Leica M3 + Elmarit 28mmF2.8 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:1/60sec. F=2.8

 モラヴィアの残照、フレクサレット #1

 美は観るひとの心に宿る、という。
 また、滅びゆくものは美しい、ともいう。
 もしもそれが真実であるなら、僕らは滅びゆくものの記憶を遺そうとして写真を撮るのだろうか?
 その答えはひとそれぞれであろうけれど、もしあなたが満開の桜を撮るよりも、路上に散った花びらにレンズを向けるようなひとだったら、是非知っておいていただきたいカメラがある。
 そのカメラは先の大戦直前に中央ヨーロッパの国で誕生し、歴史に翻弄されながら、三十余年の長きにわたって造られ続けた二眼レフである。

 数年前、仕事でチェコの首都プラハを訪れたことがある。
 そのとき泊まっていたホテルはノヴェー・ムニェスト(19世紀に再開発された新市街)の『ヴァーツラフ広場』に面していた。現在のプラハの商業的な中心地になっている、全長250mほどの、広場というよりは幅の広い通りだった。
 数日間の滞在を経た最後の夜、手近なレストランで食事を済ませてホテルに帰る途中、小さなカメラ屋を見つけた。営業を終え、灯りを落としたその店のショーウインドーには中古のカメラが並んでいる。立ち止まって眺めると、一台の美しい二眼レフに目が留まった。
 灰白色の表皮に身を包み、銘板に『フレクサレット』と読めるそのカメラは、暗い街路で不思議な光を放っていた。
 その当時は今ほど古典的な機材に興味を持っていなかったけれど、たぶん僕は何分も店の前に立ち、そのカメラを眺めていたはずだ。あいにく出発は次の早朝で、後ろ髪をひかれながらホテルに戻ったことを覚えている。
 それから数年、僕があの美しいカメラを記憶の片隅にしまい込んでしまったのは、日本の中古カメラショップの店頭で見かけなかったためだろう。その二眼レフに限らず、旧チェコスロヴァキア製のカメラなどを扱うお店はほとんどなく、カメラ雑誌のページを飾ることもなかった。

 2002年の春。インターネットで旧い二眼レフを探していた僕は、知らないうちにチェコのサイトに紛れ込み、あのカメラに再会した。パソコンの画像で見るフレクサレットは、あの夜と変わらない光を放っていた。
 その日から、あの夜のショーウインドーを夢にみるようになってしまった(ライカもローライも夢にみたことなどないのに)。僕はやむを得ずプラハのカメラ屋をネットで調べ、1台のフレクサレットをオーダーした。ヴァーツラフ広場のそばのあの店ではなく、旧市街にあるその店はネットでのカード決済が出来ず、送金手続きは面倒だったけど、それで夢から解放されるはずだった。
 ところが、それは始まりに過ぎなかったのだ。

●作例モデル:アレッサンドラ
※レギュラーの脊山麻理子さんは二週間の夏休み中です。全国のマリコファンの皆様、再登場までしばらくお待ちください。


2002年09月04日掲載

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