* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers
東京レトロフォーカス


  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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『2002年12月、西麻布』
古典カメラ趣味でいちばん高いハードルは露出問題。AE(自動露出)がアタリマエのご時世になんでわざわざ面倒な機械を使うのか。それは失敗の繰り返しが「光を読む」楽しみを教えてくれるからだ。
Arsenal Kiev 4 + LOZS Jupiter-12 35mmF2.8 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:1/50sec. F=5.6



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『2002年12月、築地』
雨上がりの水たまり。こういう風景で光を読むのはちょっと難しい。旧いカメラの露出計は(付いているモノは稀だけど)測光レンジが狭く、これくらいの日陰でも指針が動かなかったりする。
Arsenal Kiev 4 + LOZS Jupiter-12 35mmF2.8 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:1/50sec. F=4



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『クラシックカメラギャラリー#1』
今月は週変わりで古典カメラのギャラリーを掲載。いつもの黒バックに飽きたので、ちょっとレトロな雰囲気にしてみた。第一回は深紅の鉛筆削りと謎の宝石箱。その実体はイギリス・エンサイン社の『フルビュー』とチェコスロヴァキア・ATAK社の『インカ』である。どちらも中判フィルムを使うトイ(玩具)カメラで、レンズは固定焦点。どんな写りか、近々お見せします。
Nikon FE2 + Micro-Nikkor105mmF2.8 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:2sec. F=11

 古典カメラで道草 #1

 ここ四ヶ月連続でクラシック一眼レフとつき合っていたら、なんだかメインディッシュばかり出している気分になった。次の皿の準備もできているのだけど、ここで重めの料理につなぐのも気が利かない。
 で、今月は予定を変えてちょっと気軽な箸休めをお出しすることにしたい。

 僕の事務所から目と鼻の先に小学校があって、その脇の歩道に一枚の看板が立っている。ずいぶん前からそこにあるので、もう視界に入っても注意をはらうことはない。白い看板にはかすれた墨文字で「寄り道せずに登下校」と書かれている。
 こういう標語の効力というのは謎である。そもそも看板で禁止するほど寄り道はイケナイことなのか。むしろ省資源への配慮や街の美観への心配りに欠けたこういう看板こそ、学童の寄り道などよりも咎められるべきではないのか。などとツッコミを入れていると話はどんどん脇道に逸れていくので、本題に入ろう。
 寄り道とか道草というのは、ある目的を別の行為にすり替えることだ。プロセスに別の目的を見いだしてしまう、ともいえる。
 だがさる評論家の言によれば、趣味とは「手段が目的になること」だという。
 プロセスを愉しむことに喜びを見いだすという点では、旧い写真機いじりなど趣味の極北に位置するといえるだろう。なにしろこの分野は、本来の写真を撮るという目的から離れたお楽しみが満載だ。ざっとメニューを挙げると

・撮影操作に余分な手間をかけたい
・カメラを分解して構造を知りたい
・得体の知れないカメラの素性を解明したい
・いつ壊れるか、というスリルを味わいたい

 などなど。これ以外にも「チープな写りを愉しみたい」「他人に羨ましがられないコレクションを完成させたい」というようなご要望にもお応えできる機種がある。
 書いていてだんだん虚しくなってきたけど、べつだん皮肉を並べたわけではない。裏返せば、新しいカメラには上のようなアミューズメントが用意されていないということなのだ。あなたは被写体に集中するだけ、面倒なことはぜんぶ機械がやってくれます。純粋に写真を撮る道具として、これは進歩という名の正義である。
 でも、余分なことを考えさせない機械は、ある意味で標語を並べた看板のようなものだ。なぜそれをすべきか、あるいはすべきでないか、そういう理屈は表に出さない。だから「どうして登下校の時に寄り道をしてはいけないか」そのワケを知りたいひとは「なぜ逆光で露出補正するか」という理屈も知っておいた方が良い。専門書で引く手もあるけど、旧いカメラを使っていれば体験的に理解できるようになる。クラシック機にはそういう教育効果もあるのだ。
 ただしご注意。あまり古典カメラに耽溺すると、写真の原理は理解できても時代に取り残される。ふと我に返ると、カメラ付きケータイを持った子供たちが「寄り道せずに登下校」の看板を背景に、愉しそうに写真を撮りあっていたりする。
 塀の向こうの空き地になにがあるか、それは知らない方が身のためかもしれない。

※レギュラーの脊山麻理子さんは大学の冬季試験でお休み、来月からパワーアップして再登場します。乞うご期待!


2003年03月05日掲載

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