* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers
東京レトロフォーカス


  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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『2002年6月、パリ4区』
サン=ルイ島から右岸に渡った旧ユダヤ人街、通称マレ地区は僕のお気に入りの散歩コース。ここの行き止まりの路地にはたぶん一世紀以上も張り替えられていない石畳がある。太陽が雲に隠れたとき、すり減った石が反射する鈍い光をちょっと旧いレンズで撮った。
Leica M3 + Elmarit 28mmF2.8 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:1/125sec. F=5.6



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『2002年6月、パリ3区』
マレ地区の名所といえばピカソ美術館。窓から射し込む光と床からの反射のバランスが絶妙だ。そういえばこの美術館から北にすこし歩いたあたりにはパリ有数の中古カメラ屋街がある。
Leica M3 + Elmarit 28mmF2.8 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:1/30sec. F=8



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『クラシックカメラギャラリー#2』
上の作例二点を撮った物件ではないけれど、僕のお気に入り散歩カメラがこの『オペマ』。余分な機能を排したシンプルな操作系は、道すがらのちょっと気になる風景を切り取るのに最適だ。それも連動距離計を装備した左のII型ではなく、目測ファインダーしか付いていない右のI型がより好ましく思える。画面サイズが通常のライカ判より小さい(長辺が4mm短い)のもポイント。
Nikon FE2 + Micro-Nikkor105mmF2.8 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:2sec. F=11

 古典カメラで道草 #2

 集合住宅に住むようになって、犬が飼えなくなった。
 とかく運動が足りない物書きにとって、これはちょっと困った事態である。毎日決まった時刻に吠えて外出を促す犬との暮らしは、不規則な、というか怠惰な生活にリズムを与えてくれていたからだ。
 だから犬の代わりにカメラを首から下げて散歩に出かける。たぶん犬とカメラの両方を連れて歩ければ理想的なのだろうけど、そうなると引き綱を持つ片手がふさがってカメラの操作がままならない。いやもういっぽうの手にしても、犬の糞の始末をするシャベルとかを持つのでふさがってしまう。パリの犬のように引き綱もつけずに連れて歩けて、ついでに糞の始末も不要であれば問題はないのだが。
 一緒に散歩に出かけるにはどんな犬が良いか。僕は気性の穏やかな中型犬が最適だと思う。すこし前に流行ったレトリーバーは大きすぎて持て余しそうだし、さいきん流行のチワワは小さすぎて歩調が合わないし、そもそも神経質な小型犬は散歩のお供に向いていない。ほんとうは適当な雑種で良いのだけどね。
 では、散歩のお供に適したカメラは?
 僕の場合、実はこれも犬に似ているのだ。あまり気難しい操作を要求せず、首から下げてちょうど良いサイズで、欲をいえば飼い主とおなじように(?)あまり目立たないものが良い。さいきんの全自動コンパクト機にはこの条件を満たしたものが多いけど、便利すぎるカメラは飼い主よりカシコイ犬みたいで、なんだか連れて歩く気がおきなかったりする。
 そう、旧いカメラが散歩のお供に向いていると思うのは、適当に知恵が足りなくて不便なところなのだ。などと書くと愛犬団体から抗議が来そうだけど、そもそも人と犬の間柄は適度に補完しあえる関係性が重要だと思うので、べつだん犬を見下しているわけではありませんよ。
 カメラの知恵、じゃなくて機能が足りない部分を補おうとすると、飼い主にもそれなりの緊張感が必要だ。風景を観察してその場の光を読んだり、瞬時に合わせられないピントを絞りの効果で補ったり、経験とか知識とか視神経を総動員してシャッターを押す。そうして撮った写真がカメラまかせより良い出来であると、これはものすごく充実した気分になったりして、毎日の散歩も日課として定着する。
 まあそういうことは滅多にないので、僕の日常は相変わらず運動が足りていない。

 そういえば最近、パリの街を歩いていて犬の糞を踏むことが少なくなった。これはあの街の犬が減っているためか、飼い主が始末をするようになったのか、パリ市当局が歩道に流す水を増やしたのか、理由は定かでない。どれもありそうにないことだから、きっと僕の眼のセンサーがいぜんよりすこしだけ感度が上がったのだろう。
 不便なカメラを持って歩いていると、妙な御利益がある。

※レギュラーの脊山麻理子さんは大学の冬季試験でお休み、来月からパワーアップして再登場します。乞うご期待!


2003年03月12日掲載

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