* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers
東京レトロフォーカス


  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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『2002年6月、カイロ#2』
エジプト人は斜め横断の名手。この写真を撮った道路は渋滞していたけど、けっこう流れの速い道路でも平然と横断してくる。距離は目測、外部ファインダーなんか覗いているヒマはない。
Leica M3 + Elmarit 28mmF2.8 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:1/125sec. F=8



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『2002年6月、カイロ#3』
走り去るヘリオポリス。こんなふうに車窓から撮るときはレリーズタイムラグの少ないカメラが必須、AFもAEも邪魔なだけ。
Leica M3 + Elmarit 28mmF2.8 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:1/125sec. F=8



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『クラシックカメラギャラリー#4』
来月からのお題は旧ソ連製ドイツカメラの名品、キエフ・レンジファインダー機。その実体は旧ツァイス・イコン製コンタックスである。今も実用になる優れたファインダーを搭載しているが、視野枠が表示されないので外部ファインダーは必須。
Nikon FE2 + Micro-Nikkor105mmF2.8 FUJICHROME ASTIA (RAP) Exposure Data:2sec. F=11

 古典カメラで道草 #4

 趣味の物品にはいろいろな無駄がある。無駄をぜんぶ取り除いたら、後には実用品しか残らない。僕のような人間から無駄を取り除くと、後には空気しか残らないらしい。
 実用品であると同時に趣味の品であるカメラにも無駄はたくさんあって、その代表的な場所が軍艦部に設けてある。滅多に使われないのになんとなく意味ありげな空き地、アクセサリーシュウというやつだ。
 ここ二三十年というもの、この地所はクリップオン型のストロボが占有している。ところがこいつは予約を入れるばかりでめったに現れない、まことにケシカラヌ奴である。偶にしか使わないくせに専用の接点など設けて、他の利用者を排除しようとする。この態度を快く思わぬひとは多くて、特に大光量を必要としないアマチュア写真家の多くはストロボ内蔵の一眼レフなどに流れているという。そういう機種にもアクセサリーシュウはついているのだけど、これは地上げの後に頓挫した計画地みたいに、いつも更地を晒している。
 僕がストロボをあまり使わない理由には、クリップオンの基部が不安定に見えてカメラとの一体感が希薄だ、ということもある。特に一眼レフのペンタ部に背の高いストロボが載った姿はどうも納得できない。機能の必然としては理解できるのだけど、なんだか違法建築みたいで、風が吹いたら折れそうで怖い。実際にはそんなにヤワでないらしいけど。
 ほんらいこの土地は誰でも使えるはずだった。ユーザーのお楽しみのために開放された場所だから、灰皿でもインク壺でも包丁研ぎでも、好きなモノを載せて良いのである。まあ常識的なユーザーはフラッシュ(ストロボに非ず。閃光電球です)か距離計か露出計、または外部ファインダーを載せていた。近接撮影用のアダプターなどもときおり見かける。水準器を載せたひともいるらしいが、これは工事関係者だろう。
 距離計や露出計はカメラに内蔵されてしまったし、レンズ交換式のカメラが一眼レフに移行して外部ファインダーも使われなくなった。そうしてフラッシュに取って代わったストロボを好まないユーザーには空虚な空き地が残されたのだった。
 ふだんは意識しない場所だけど、たまには使ってみたくなる。で、なにか姿カタチの良いアクセサリーはないものかと思っていたら、ここ数年のレンジファインダーブームで外部ファインダーの市場がにわかに活気を帯びてきた。レンズの付属品としてだけでなく、単品の新製品も発売されているし、望めば過去の膨大な製品群から選べる。交換レンズと焦点距離が一致していれば基本的にはどんな組み合わせでもオッケーなのだから、合体ロボみたいに好きなデザインでカメラを飾ることができて、物欲物品としてはかなり危険な存在だ。
 こうして軍艦部の空き地はふたたび使われるようになった。無駄な空間が有効利用されるのだから、これは喜ぶべきことなのだろう。ただし外部ファインダーはどんなに見え(外観デザインとファインダー像の両方)が良くても、写真のアガリとは無関係である。こういう物品がヒトを惹きつけるとしたら、それは実用性より無駄な部分の魅力によるものだろう。
 かくいう僕も、見えの良いファインダーに大枚を払って、あとからこれに似合いそうなボディやレンズを探したりしている。我ながら馬鹿みたいだが、空き地が地雷原だったことに気付いたときは、もう引き返せない場所まで来ているものだ。

*次号より「キエフ編」がスタート。レギュラーの脊山麻理子さんも再登場します。


2003年03月26日掲載

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