* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers
東京レトロフォーカス


  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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コンタックス/キエフRFは距離計窓を指で塞がないように持つのが基本。ピント合わせはフォーカシングギアよりレンズ鏡胴を回した方がスムーズだ。蘇州の運河にて、久し振りのモノクロ撮影。
Arsenal Kiev 4 + KMZ Jupiter-8 50mmF2 FUJIFILM NEOPAN 400 PRESTO Exposure Data:1/50sec. F=5.6



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上海豫園にて、いつものM3に旧ソ連製レンズを装着して撮影。ツァイスのトポゴンを範とした(?)広角レンズ、オリオン15のLTM(ライカ・スレッドマウント)仕様だ。ご覧のように盛大な周辺減光を生じる、僕の大好きなレンズである。このレンズにはコンタックス/キエフマウント版も存在する(市場価格はLTM版の2倍近い)。
Leica M3 + ZOMS Orion-15 28mmF6 FUJICHROME PROVIA100F (RDPIII) Exposure Data:1/30sec. F=8



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●今週のお題:
『キエフRF』
ツァイス・イコンの“イデア”が宿る独創的バヨネットマウント。レンズ繰り出し用ヘリコイドを内蔵、標準レンズ(それ自体ヘリコイドを持たない)は内周の爪に、それ以外のレンズはすべて外周の爪に装着する。ヘリコイドの回転動作は斜め上方のフォーカシングギアおよび光学距離計に連動し、ギアを回せば指先で精密なピント合わせができる。ギアの背後に見える突起はヘリコイドの無限遠ロック機構(標準レンズの脱着時に用いる)を解除するレバー。
Nikon FE2 + Micro-Nikkor105mmF2.8 FUJICHROME PROVIA100F (RDPIII) Exposure Data:2sec. F=16

 キエフへの道 #1

 上海の老街を歩きながら撮影しているとき、脊山さんがカメラの不調を訴えた。
「これ、シャッターが切れないみたいです」
 手にすれば確かにシャッターをチャージしてもレリーズの手応えがない。いろいろ試しているうち、ハタと原因に思い当たった。
「そうか、シャッターリボンが切れたんだ」
 このトラブルは愛好家の間ではよく知られている。頑丈な金属製の鎧戸を駆動するシルクのリボン。それはある日突然に前触れもなく切れる、文字通りキエフのアキレス腱なのだ。
 話には聞いていたけど、実際このトラブルに遭遇したのははじめてだ。リボン切れが発生したキエフは修理に出すしかない。手先の器用な中国人ならその場で適当に直せるだろうか?
 あいにく上海に修理業者のあてはなく、もしあってもキエフの分解整備はまず手に負えないだろう。これほど複雑なカメラを大量に製造した国は世界にふたつしかない。
 僕は首から下げていたもう一台のキエフを脊山さんに渡し、自分はサブカメラのM3にスイッチすることにした。「キエフを持つセヤマ・マリコをキエフで撮る」計画はここで修正を余儀なくされたが、ライカマウントの旧ソ連製レンズも持参しているから撮影は続行できる。
 急に負担が軽くなった指先にあらためて両機の違いを実感しながら、僕はキエフの修理費用(レンズ付きボディ1台分に相当する)のことを考えてすこし落ち込み、それから急に愉快な気分になった。これで自分も一人前のキエフ使いになれたのかもしれない。
 キャリアの長い愛好家なら、たぶんこんな考えは一笑に付すだろう。リボンを切って一人前のキエフ使いだって? そんな称号は自慢にもならない。どうせ名乗るなら模造品でなく“真っ当なコンタックス使い”にし給え、と。
 なるほど「キエフは旧ソ連で造られたコンタックス・コピー機である」と、たしかに世間一般にはそう信じられている。いや世間一般にコンタックスは知られていてもキエフは無名だから、普通のマニアの間では、と書くべきか。インターネット上の中古カメラ屋も皆おなじことを言っている。当のキエフを製造した旧ソ連のショップサイトだって、中古品を堂々と“russian Contax copy camera”と銘打って販売しているじゃないか。
 だが、この表現は「遠からずといえども当たらず」である。キエフ・レンジファインダー機はコンタックスの模造品ではない。それは「訳あって旧ソ連で製造されたドイツカメラ」なのだ。
 そのワケとはなにか。話は今から70年前のドイツに始まり、15年前のソ連で終わる。

●作例モデル:脊山麻理子

※キエフRF編の作例は脊山さんの中国旅行に同行させていただき撮影しました。脊山家のご協力に感謝します。
※脊山さん撮影の作品集は5月第1週より掲載の予定です。ご期待ください。


2003年04月02日掲載

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