* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers
東京レトロフォーカス


  文/中山慶太 --->Back Number  写真/脊山麻理子


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ちょっと路地を入れば、映画のセットに迷い込んだかの如し。
この雰囲気、出そうと思っても出せるもんじゃない。
すべてに殺気を感じる!さすが雑技の国!マンパワー!
すごいよ中国!
ありえないがありえる国。逆にありえるがありえない国。
この角を曲がるときは息を止めたよ、キョンシーに見つからないために。
(by maRiko / kiev 4a + Jupiter-12)



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この靴はどういった理由でここに並んでいたのだろうか。
売るため?ではどうして4足?どうして黒だけ?
赤、黄色、青、このお母さんと子供の洋服の色を合わせると、信号。
どこの角を曲がっても謎は深まるばかり。
(by maRiko / kiev 4a + Jupiter-12)



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窓一つないグレーの壁に赤いドア一つ。
そこへピンクのハンガーにモスグリーンに変色したパンツがひとつ、干してありました。
摩訶不思議。退廃is ART.
(by maRiko / kiev 4a + Jupiter-12)

東京レトロフォーカス Special Edition
『視線のラティチュード #1』


 旧いカメラを使っていると、周囲のひとに「そんなカメラで……」といわれることがある。
 このあとに続くフレーズには定型があって、「ちゃんと撮れるんですか」撮れます。「面倒じゃないですか」けっこう面倒で愉しいですよ。「壊れませんか」ええ、たまに。
 こういう受け答えをしていると次第に相手は引いていって、会話も続かないのだけど、どんなカメラを使ってもリスクはある。もちろん最新の機種ほど問題が起きる確率は低くなるから、僕もこの連載以外の仕事などで「外せない」ときは新しめのカメラを使う。ただそういうときに限って操作を間違えたり電池が切れたりするのは、ちょっと困ったものである。
 旧いカメラの扱いというのは、一定のお約束さえ覚えてしまえばそんなに難しいものではない。薄い取説に書いてある最低限のお約束を確認するだけで(中古物品に取説が付属することは稀だけど)、はじめてのカメラでもすぐに撮れる。ただし撮影に際しては写真の基礎知識が必要で、痒いところに手が届くサービスもないから、うまくつき合うには阿吽(あうん)の呼吸を覚えないといけない。敷居が高くて無愛想だけど、いったん慣れると居心地の良い老舗みたいなものだ。
 ところが最新のカメラはいっけん愛想がいいようでいて、アルバイトの女の子みたいに融通が利かなかったりする。ヒューマン・インターフェースの進化を謳う操作ソフトも写真の原理が直感的に理解できなかったりして、だからこちらも分厚い接客マニュアルに精通しないといけない。老舗がとうてい及ばないサービスメニューを使いこなすためには致し方ないことといえ、たかが写真を撮るのに覚えきれないほどの機能を必要とするのだろうか。メールを出したり着メロをダウンロードするわけじゃないのだ。
 もちろんこれは偏見というか、かなりひねくれたものの見方である。現代の多機能カメラは撮影の条件をいくつかに分類して、そのシチュエーションに即応できるようになっている。しかもたいていは「カメラまかせの楽ちんモード」も用意されているから、ぜんぶの機能を覚えなくても写真は撮れる。苦労して取説を読破する必要もないのである(ちゃんと読んだ方がいいと思うけど)。

 フィルムの性質を表すとき「ラティチュード」という用語が使われる。日本語に置き換えると“寛容度”というのだけど、ちょっとわかりにくい概念である。リバーサルはラティチュードが狭いというのは、僅かな露出量の差が結果にシビアに現れるということだ。カラーネガはラティチュードが広く、モノクロはさらに広いので露出が相当にズレていてもプリントで救えたりする。これを無理矢理カメラにあてはめると、古典機は使う人間のラティチュードを要求し、最新のカメラはそれ自体が広いラティチュードを持っている、といえようか。
 だから最近の若者に古典カメラを持たせたら、そう易々と良い写真は撮れまい。マニュアル世代を見返すチャンスだ。ふっふっふ。と意地悪をするつもりはないのだけど、先日の上海ロケで脊山麻理子さんにカメラを渡したのは日本を出る空港でのことである。
 結果は残念ながら(?)ご覧のように、ちゃんと良い写真が撮れている。これは僕の操作説明が的確だったためか、最新のネガフィルムの威力か、それとも彼女の勘が良いのか。たぶん後のふたつの相乗効果だろう。しかも途中で最新の自動カメラを渡したところ「旧いカメラの方が撮っていて愉しいです」と平然と言うではないか。
 馴染みの老舗まで若者に奪われて、オヤジはどこに避難すれば良いというのだ。

※脊山麻理子さん撮影の「上海・蘇州」特集、次回は6月第1週に掲載します。


2003年05月07日掲載

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