* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers
東京レトロフォーカス


  文/中山慶太 --->Back Number  写真/脊山麻理子


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ジュースのラックの女の子。
上海の銀座と呼ばれるところの一本中の道に入れば閑散としていてひと恋しいこんな通りが延々と続いている。激しい外側と、うちに秘めた冷たさ、さらにうちに秘めた情熱。空気は湿気がなく乾いていて、人は情熱的に激しく恋に生きる。女性はロリータなのに大人っぽくセクシーで、男は殺人犯みたいにワルの雰囲気を持ちながらやさしい。ファインダーのぞいていたらそんな中国の恋愛映画が見たくなったよ。
(by maRiko / kiev 4a + Jupiter-12)



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みかんの箱。
パンダがみかんを食べているこのパッケージ、中国っぽくてかわいい! 古谷実の漫画に描いてあったけど、パンダはもともと白熊で、動物進化会議の前にシャチを見たその白熊は黒に白いアイメイクがかっこいい! って感動して俺もそうしようと思ったのによく記憶していなくて白に黒いアイメイクだった気がしてそれでお願いします、って進化の神に申請しちゃったんだって。それでパンダはあんな不思議にかわいらしいおまぬけな配色になったんだって。中国っぽいエピソード! かっこいいのになんかお間抜けなところも魅力だよ! 眠れる獅子中国!!
(by maRiko / kiev 4a + Jupiter-12)



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上海のポスター。
なんてアグレッシブなポスターだろう! 私にはつくれないアートだ。
私は日本人なんだなあと実感したよ。
(by maRiko / kiev 4a + Jupiter-12)

東京レトロフォーカス Special Edition
『視線のラティチュード #2』


 そういえば最近、フィルターを使わなくなった。
 カメラを弄りはじめたころはフィルターが好きだった。けっこういろんなフィルターを買っては、レンズの前枠にせっせとねじ込んでいた記憶がある。今のように無謀にカメラを買い足すことなど考えもおよばなかったから、安価なアクセサリーで物欲を満たしていたのだろう。
 カメラ好きの父が所有していた機材は、どれも前枠にスカイライトフィルターが常備されていたように思う。表現上の効果ではなく、レンズ面の保護という意味が大きかったのだろう。なんだか新車のシートに被せてある透明ビニールを破かずに乗っているみたいで、今では滑稽なイメージもあるのだけど、庶民にとってカメラは高価な玩具だったのだ。
 PLに凝ったこともある。高校野球で有名な大阪の私立高校じゃなくて、偏光フィルターのことだ。水面やガラスなど特定の反射光をカットする効果があり、色彩やコントラストが強調される。晴れた海辺でこれを使うと空は宇宙のように暗く、水面もバスクリンみたいな色になる。夏の化粧品のポスターみたいで面白かったけど、すぐに飽きた。
 色フィルター(正式名称は知らない。カラーコンバージョンだったっけ)というのもあって、女性を撮るときによく使った。写真用は高価だったので画材屋で色セロファンを買ってきて、適当なサイズに切ってシートフィルターホルダーに入れた。使うとすぐに傷がついたけど、多少の傷は画質にあまり影響がないというか、そういう効果を入れた写真では気にならなくなる。これはけっこうハマったけど、あざとい感じがして止めた。
 他に愛用していたフィルターにはND(ニュートラル・デンシティ)とか曇天用の色温度補正とか、いろいろある。目の粗い紗もソフト効果用に使っていたことがある。ねじ込みフィルターはレンズの口径に合わせて揃えないといけないし、僕はレンズキャップやフィルターなどの小物をすぐに紛失するから、合計するとけっこうな出費になった筈だ。旅先で紛失したズミルクスの金属キャップは今でも惜しい。
 で、そうして小金を投じて得たものは、じつはあまり多くない。小細工に頼るヒマがあったら一枚でも多く撮る方が良い。こう書けばいかにものアフォリズムにはなるけれど、もともとの絵がちゃんとしていないとなにをやっても駄目、というアタリマエのことにちょっぴり気付いただけなのだ。

 脊山さんと上海・蘇州を巡っていたとき、持参していたYGフィルターを使う気になった。これはモノクロ用シャープカットフィルター(以前この項で「コントラスト強調用」と書いたのは誤り)の一種で、僕はほとんど使ったことがない。これをカラー変換フィルターに転用したのは旅行中の天気に恵まれなかったからだ。
 結果はまあ中国的な色になって、あざといけどそれなりに気に入っている。でも僕がそういう小細工を弄しているあいだに、彼女はちゃんと色を見つけていた。欲しいものは探せばちゃんと見つかる。探さなくても見つけられるひとは、生まれつき視線のラティチュードが広いひとなのだろう。
 ソウイウヒトニナリタイト私ハオモウ。

脊山麻理子さん撮影の「上海・蘇州」特集、次回は7月第1週に掲載します。


2003年06月04日掲載

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