* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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造っているのか壊しているのかよくわからない工事現場。こういうところがやっぱりアジア。
Leica M3 + ZOMS Orion-15 28mmF6 FUJICOLOR NewPRO400 (PN400N) Exposure Data:1/30sec. F=8+1/2



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赤が印象的な老街にて。この直前にキエフ4のリボンが切れたので、不本意ながらまたしてもライカ。
Leica M3 + Elmarit 28mmF2.8 FUJICHROME PROVIA400F (RHPIII) Exposure Data:1/125sec. F=4



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●今週のお題:
『キエフRF』
新旧コンタックスの軍艦部比較。手前は戦後にシュツットガルトで生産された西側ツァイス・イコン製のIIa型。1954年のマイナーチェンジ後はこのようにシャッターダイヤルの色分けでフラッシュバルブの種類を明示している。またフィルムの巻き上げは背後のキエフ(=戦前コンタックス)よりずっとスムーズになった。市場では戦前型よりも人気が高いが、距離計基線長が短縮された分をファインダー倍率で補うなど、ツァイスの理想主義が後退してしまった。個人的にはキエフの方が好きだ。
Nikon FE2 + Micro-Nikkor105mmF2.8 FUJICHROME PROVIA100F (RDPIII) Exposure Data:2sec. F=16

 キエフへの道 #11

 コンタックス/キエフの構造について、もうすこし詳しく見てみよう。
 この異母姉妹には現在のカメラにない特長が多いが、それは言い換えれば「主流になり得ず、廃れたメカニズム」ということである。一部にその理想主義に対して熱狂的な信者を持つ機構設計が、なぜ歴史の狭間に消えたのか(いや、実際には80年代半ばまでウクライナの地で造り続けられていたのだが)。
 RF機の主流となったライカ、およびそのフォロワーたちに対するコンタックス/キエフの最大のアドバンテージは、距離計の精度にあるといわれる。先に記したように、このカメラの光学距離計はバルナック型ライカの優に2倍以上、M型ライカに対しても3割増しという長大な基線長(カメラ前面の距離計窓と対物窓の中心点の距離)を持っていたからだ。
 よく知られているように、レンジファインダーカメラの測距システムは三角測量の原理を用いている。その昔、道路工事の現場などで測量技師が棒を立て、分度器みたいな道具で距離を測っていたあれである。わざわざ棒を立てなくても、遠くに高いビルなどがあれば正確な距離を出せるらしい。カメラで棒やビルにあたるのが基線長で、これをなるべく長く取れば測距誤差は少なくなる*。
 だから基線長の長いコンタックス/キエフは望遠レンズを使ってもピントの精度が高い、という単純な見方があるが、それは半分しか正しくない。RF機の測距精度を決めるのは実際の基線長とファインダーの倍率を掛け合わせた「有効基線長」なのだ。この数字を新旧ライカと比較すると、

●ライカIII型=57mm(基線長38mm×ファインダー倍率1.5倍)
●ライカM3=62.3mm(基線長69.25mm×倍率0.9倍)
●コンタックスII・III型およびキエフRF各型=62.7mm(基線長89.5mm×倍率0.7倍)

 と、実はそれほど大きな差はない。この数字から理論上の測距限界を算出した場合、例えば135mmの望遠レンズで安全とされる最小絞り値はライカIII型でF4.2、コンタックス/キエフではF3.8あたり**。なんと半絞りも違わないのだった。
 なんだ、キエフは望遠でピントが合うって聞いて買ったのに、ぜんぜん変わらないじゃないか! とお怒りのあなた。大丈夫、ちゃんと違います。
 上記のカメラを使ってみれば分かるけど、望遠レンズでのピント的中率はやはりコンタックスやキエフに一日の長がある。特に90mmを越える焦点域になると、ライカは望遠向きとされるM3***でも笑えるほど打率が低い。物好きな僕はファインダー倍率をさらに高くできる眼鏡付きエルマリート135mmを入手したものの、おなじ条件でのピント的中率はキエフの半分程度だ。
 なぜこうなるのか。その秘密はコンタックス/キエフのマウント構造にある。

●作例モデル:脊山麻理子

*注1:三角測量による光学距離計は大砲などの射撃管制にも用いられる。旧日本海軍が建造した戦艦「大和」「武蔵」には基線長15mの測距儀が搭載されていた(製造は日本光学=現在のニコン)。ちなみに最新のAFカメラに用いられる位相差測距モジュールにも一種の三角測量法が用いられている。

**注2:この数字はファインダーの二重像を観察する人間の眼の分解能力によって変化する。上記は安全率1.5度を掛けた数値。

***注3:M型ライカは各型式でファインダー倍率が異なる。倍率がもっとも高いのはM3で約0.9倍(ただしM2やM4以降の機種と違い、広角域のフレームは持たない)。


2003年07月16日掲載

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