* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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「花を食べる女」 来年は何を食べるのか、麻理子ちゃん。
Nikon FE2 + Arsenal Arsat-N 50mmF1.4 FUJICHROME ASTIA100F (RAPF) Exposure Data:1/30sec. F=1.4



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読者の皆様、今年1年のご愛読ありがとうございました。メリークリスマス&ハッピーニューイヤー!
Nikon FE2 + Arsenal Mir-24N 35mmF2 FUJICHROME ASTIA100F (RAPF) Exposure Data:1/250sec. F=2



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●今週のお題:
『キエフ10/15』
恐竜は死せず、ただ去りゆくのみ。
Nikon FE2 + Micro-Nikkor105mmF2.8 FUJICHROME PROVIA100F (RDPIII) Exposure Data:2sec. F=16

 恐竜の時代 #15

 さて、前編から半年以上にわたって連載したキエフのお話も、ようやく最終回である。書き漏らしたこと、調べても分からなかったことも多く、また勘違いや冗漫な記述で不満をお持ちの方も多いと思う。ここは自らの不明を恥じて識者のご指導をお待ちしたい。

 連載でも触れたように、旧ソ連製カメラは戦前ドイツの光学技術と機械技術をもとにつくられ、その後独自の進化を遂げた。これは日本製のカメラもまったくおなじ道筋を歩んだのであって、一般にいわれる「ロシアカメラは西側製品の模倣」というのは、いわれのない誹謗である。少なくとも60年代までの製品については、造り手の意志と情熱を感じさせる製品が少なくない。
 なかでもキエフは傑出したカメラだ。初期のRF機は戦前コンタックスの技術をきちんと継承し、SLRのキエフ10と15はあらゆる部分に独自性が息づいている。それらはソ連の充実した国力と急激に成長する社会のパワーを伝える、なんとも不思議な魅力に満ちているのだ。ただしその機能を十全に発揮するだけのコンディションにあるカメラはほとんど現存せず、このカメラの魅力を知るひとも限られているのは残念なことである。
 ……と、こう書くと、それが今でも第一級のパフォーマンスを持つ機械のような印象を与えるかもしれないが、そういうことではない。キエフ10と15の露出精度は(初期の自動露出カメラの例に漏れず)けっして高くないし、独特の手順を必要とする操作系もあまりこなれているとは言い難い。この点、より古典的な機械式カメラの方がずっと使いやすい。これは皮肉な事実である。
 幸か不幸か、初期のキエフSLRはソ連の輸出品リストには加えられず、西側には幻のカメラであった。歴史に“イフ”はないから、これは想像にすぎないのだけど、もしもキエフ10/15が西側に輸出されていたとしても、小型軽量と自動化をスマートに両立させた日本製SLRにはとうてい太刀打ちできなかっただろう。
 では、今なぜキエフを使うのか。その魅力はどこにあるのか。
 その答えはひとそれぞれだろうけれど、やはり「独自性=オリジナリティ」に尽きるのではないか。ひとつの命題に、他人と違う答えを求める。それは写真表現の原点であって、その道具を慣れ親しんだ日本製やドイツ製カメラから変えることで、なにがしか違う表現ができそうな気がする。これは勘違いだ。でも趣味の世界は往々にして勘違いや思い込みの上に成り立っているのだから、それで良いのだと思う。

 キエフという名のカメラは、ソ連崩壊後の今もウクライナのアーセナル工場で造られている。製品には過日の面影はないけれど、35mmや中判カメラ用のレンズには第一級の性能を持つものが少なくない。僕の知人がロシアを旅行したときにキエフの話をしたら「あれはウクライナのカメラであって、ロシア製カメラではない」と言われたそうだ。
 戦争が終わってはじまったコンタックスの流転は、ようやく終わったのだろうか。

※次号は番外編「古典カメラの買い物術」をお送りします。

●モデル:脊山麻理子

■本稿の執筆にあたってはロシアカメラ研究家の三枝史明氏が運営されるWebサイト『Old Soviet Camera Guide』より多くの示唆をいただきました。



2003年12月24日掲載

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