* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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丘の上から望むフィレンツェ旧市街。12月のトスカーナの空をモノクロで強調した。そういえばレクター博士はこの景観を完璧に記憶して、独房で細密画を描いていたらしい。非凡な記憶力である。
Leica M3 + Schneider Super-Angulon 21mmF4 FUJIFILM Neopan 400 Presto Exposure Data:1/60sec. F8



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フィレンツェ、ウフィツィ美術館の出口にて。ここも「ハンニバル(2000年・米国・ギャガ=ヒューマックス)」のロケに使われていた。
Leica M3 + Elmarit-M 28mmF2.8 FUJIFILM Neopan 400 Presto Exposure Data:1/30sec. F8





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最近のお買い物。東独ウェルタ社製の「ベルミラ」は同社がVEBペンタコンに統合される直前の製品で、生産数が少なく市場でもちょっと珍しい存在だ。殆ど等倍に近いファインダーの基線長は75mmもあり、これは戦前コンタックスを凌ぐものの、標準レンズ(マイヤのトリオプラン50mmF2.8)が固定されたカメラには明らかなオーバースペック。ファインダー接眼部の位置にウェルタらしさが残るが、レンズシャッターやレリーズボタンの位置にはKWの影響も垣間見られる。
Nikon FE2 + Micro-Nikkor105mmF2.8 FUJICHROME PROVIA100F (RDPIII) Exposure Data:2sec. F=16

東京レトロフォーカス Special Edition
『古典カメラの買い物術 #1』


 今月はちょっと趣向を変えて、旧いカメラの買い方について書いてみよう。ほんとうは年末の「財布の紐が緩む時期」に合わせれば良さそうな企画だけど、気が利かないのはいつものことなので、ご容赦。
 クラシックカメラを取り巻く環境も、ここ数年でずいぶん様変わりしたようだ。ひところのようなブームが鎮静化して、特にライカのようなブランド品は値頃感が出てきた。
 そこでこのコーナーでは

「今が買い時、M型ライカの狙い目はこの機種だ」

 なんてことを書く気は毛頭ないので、ご安心ください。なにしろ筆者は昨年の大半を旧ソ連カメラ研究に費やし、せっせとカメラを買い込んだおかげで、貨幣価値がルーブル基準になってしまったのだ。
 それにしても、よくわからないのがカメラの相場という奴である。税法上はとっくの昔に償却されたような機械の値段が、なぜ市場で目減りしていかないのか。クルマなら値段がつかないような年式のカメラでも、お店で「持ってけ泥棒」と言われたことはない。ある種のカメラなど、むしろ旧くなるほど高くなる。これは理不尽だ。
 思うに、こうした風潮の根元には「稀少価値」に対する執着がある。世界に○○個しか存在しない物品を、自分の手元に置きたいという願望。それはコレクターに特有の心理であって、ほんらいの写真趣味とは別種のことなのだけど、そのあたりに明快な境界線を引けるひとはこれまた稀少な存在である。
 いや自分はコレクターではない、ただ描写性を追求していたら稀少品に行き着いた、というひともいるだろう。僕もそういう好奇心の強さでは人後に落ちないから、気持ちはよく分かる。でも稀少品に大枚をはたく前に、珍しいカメラやレンズはなぜ珍しいのか、その理由をじっくり考えた方が良いと思う。

 レア物にはそれほど興味はない、描写にもさほど拘らない、でも昔のカメラのデザインや質感、操作感が好きだ。そういうひとは健全な(?)コレクターになれる資質がある。そういう方の多くはライカあたりを一台持つと満足してしまいそうだけど、ここは是非とも機械式カメラの中級機を試していただきたい。感触は高級機におよばないとしても、中級機には制約のなかで努力した設計者の志が感じられるものがすくなくないからだ。
 今回紹介した「ベルミラ」などはよい例で、戦後の壁を隔てた向こう側のドイツで、個性や贅沢が否定される直前に生まれたカメラである。当時の価格はわからない。でも高価な品でないことは明らかで、一点豪華主義的なファインダーを除くと造りは質実剛健という感じだ(そこが良いのだが)。問題はこれもかなりの稀少品種というところだけど、探せないほど珍しいカメラでもないし、レア物にありがちな馬鹿げた値段も(今のところは)ついていない。
 ではどうやって探すか。そのあたりの手練手管は次号にて。


2004年01月07日掲載

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