* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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上野駅〜水上温泉駅を結ぶ不定期運行のSLに乗車して。これはパノラマのラウンジ客車で撮ったお気に入りの一枚。オリオン15は半逆光ではこのように気持ちの良い描写をするが……。
Voigtlander Bessa-T + Orion-15 28mmF6 FUJICOLOR NewPRO400 (PN400N) Exposure Data:1/60sec. F6



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車窓に流れるSLの蒸気を逆光で撮る。オリオン15の最大の弱点は逆光に弱いこと。ここでは画面全域でフレアによるコントラスト低下があり、周辺には虹色の光彩が出現している(場合によっては栗型のゴーストも出る)。オリオンはフードの装着が難しいので、これもクラシックレンズの雰囲気と割り切ってしまおう。
Voigtlander Bessa-T + Orion-15 28mmF6 FUJICOLOR NewPRO400 (PN400N) Exposure Data:1/250sec. F8



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フォクトレンダー・ベッサTにオリオン15を装着。現在のフォクトレンダー製品はご存知のように日本のコシナが企画製造するもので、1970年代に消滅したドイツの本家とは直接関係がない。コシナ製ベッサシリーズのなかでこの「T」は趣味のカメラとしてなかなか面白い機種だけど、話題になったファインダー部はバルナックライカから構図決定用ファインダーを取り除いただけの中途半端なもの。プロミネントのように本格的なからくり仕掛けを期待したいのだが。

東京レトロフォーカス Special Edition
『クラシックレンズの修辞法 #3』


 レンズを入手したら、先ずテスト撮影をする。これは最新のレンズでも欠かせない儀式だけど、設計製造の旧いものでは特に重要だ。やり方は難しくない。専門誌のテストを参考に、夜景や建築物、風景や人物などを絞り値を変えて撮る。夜景では点光源を入れて周辺のコマ収差を観察し、建築物では歪曲収差の出方をみる。光線の条件を変えることも重要で、晴天と曇天、そして逆光時のフレアの影響も観察しよう。
 テストは常用フィルムを使い、できればおなじ焦点距離のレンズを使って条件をそろえて撮る。フィルムはリバーサルが発色の確認に向いているが、微妙なコントラストの観察はモノクロが最適。モノクロを撮らないひとはカラーネガをスキャンすると分かりやすい。
 と、こう書くとかなり大変な作業に思えるけど、あまり難しく考えず、ふだん撮っているモチーフで比較すると良い。僕の場合はテストに数ヶ月かけることも珍しくない(まだテストを終えていないレンズもたくさんある)。たいせつなのは先入観を捨てて観察することだと思う。旧いレンズの場合はコンディションに差があることが多く、雑誌の記事などはあまりあてにならないのだ。
 ついでにレンズのコンディションについて書くと、これまでの経験では前玉の拭き傷や内部の軽微なゴミ、気泡は画質にさほど影響がない。コーティングのムラ(けっこう多い)も同様。逆に後玉付近の拭き傷やゴミには注意すべきで、これはデジタルカメラの撮像素子やローパスフィルターに付着したゴミに近い影響がある。特に後玉がフィルム面に接近したRF機用の広角レンズなどでは注意が必要だ。レンズ内部の曇り(大気中の塵や油分が付着したもの)はソフトフォーカス効果があるので、これも困りもの。いわゆるバル切れ、つまりレンズ接合面の接着剤が剥離している場合は深刻だが、光軸を外れた箇所なら影響がでないこともある。日本の中古レンズに多いカビの影響はゴミと同様だけど、欧州から来たレンズにはあまり発見されない。
 テスト撮影した結果は、なるべく倍率の高いルーペで観察するか、スキャンしてパソコンに取り込んで拡大する。周辺の画像の流れが四隅で不均一に出ている場合、レンズが偏芯している可能性がある。解決はしかるべき設備を持つところで分解調整するしかない。クラシックレンズでこれができる工房はほとんどないし、よほど高価なレンズでなければコスト的に見あわないだろうから、多少のことは気にせず、気軽なスナップ撮影にでも使おう。デカくて重いレンズは処置に困るけど。

 さて、今回の作例で使ったオリオン15はどうだろう。僕はこのレンズを2本所有しているけど、どちらもほとんどおなじ描写である(60年代に造られたソ連製品は品質管理がわりとしっかりしている。明らかにハズレのレンズは素人が分解した可能性が高い)。解像力はほどほど、トポゴン型特有の歪みのない描写は気持ちがいいが、コントラストは明らかに不足している。曇天や薄暮などに建築物を撮ると、安手の映画セット(いわゆるタテコミ)みたいに平板に写ることもある。これは絞ってもあまり改善されず、レンズ構成よりも反射防止コーティングによるところが大きそうだ。
 オリオンに限らず、旧いレンズの使いこなしにはいくつかポイントがある。その点は次号にて。


2004年02月18日掲載

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