* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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ウィーンの老舗カフェ、モーツァルトの昼下がり。オーストリアの昼食は欧州勢でもわりと短い方だけど、それでもお昼休みは2時間くらい続く。左の人物の革ジャンの質感が良い感じ。
Pentax ESII + SMC Takumar 28mmF3.5 FUJIFILM Neopan400 Presto Exposure Data:AE



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ウィーンの王宮前広場にて、インラインスケートに興じる留学生たちを東独ツァイスのレンズで撮る。最新のAF機なら苦もなく追従できる条件だけど、昔のマニュアル機で動体を追うのはけっこう大変だ。シャッタースピードはもっと遅くすべき。
Pentax ESII + Carl Zeiss Jena Pancolar 50mmF2 FUJIFILM Neopan400 Presto Exposure Data:AE



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国産カメラの黄金時代を代表する「偉大なる中級カメラ」アサヒペンタックスSP系の掉尾を飾る2台。右のESIIはSLRとして世界初のTTL自動露出機構を持つES(1971年)の改良型で、1973年の発売。左のSPII(1974年)はシンプルな絞り込み測光機能を持つマニュアル機だが、内容はその十年前に発売された名機、ペンタックスSPと基本的に同一。この時期ペンタックスはレンズマウントを変更した新世代機を発売しており、SPIIは旧マウント愛好家へのプレゼントというべきリバイバル機だった。

東京レトロフォーカス Special Edition
『ちょっと旧い国産機を使ってみよう #1』


 灯台もと暗し、というワケではないけれど。この連載が始まってもうすぐ2年になるのに、これまで真面目に国産のカメラと向き合ってこなかった。べつだん僕らの親の世代のように、舶来品に憧れや信仰があるわけではない。普段の仕事の大半は新しめの国産機で撮っているし、そういう物品には愛着のある機材も多い。
 ただし仕事の機材というのは信用第一。機能は二番目で、三四がなくて五番目あたりに描写性が来る。つまりトラブルの確率が低く(“ゼロ”はないと考えなければいけない)、こちらの要求に黙って応えてくれて、なおかつ水準以上の仕上がりをコンスタントに提出してくれる、そういう機材だ。
 それにしてもこうやって条件を書き出してみると、自分と正反対の人物像を描いているようで笑える。いや笑って済ませてはいけないのだけど、自分に欠けた部分を補ってくれる相手こそ信頼できるパートナー、ということかもしれない。
 半世紀も前の機材だとそうはいかない。凸凹(デコボコ)コンビというのは文字通り互いに補完しあう間柄だからまだイイけど、デコデコやボコボコは洒落にならないのだ。アバウトな人間にアバウトな機材を与えたときの悲惨な末路は、この連載ではあまり公開していないけど、没写真の山である。
 それじゃあ最新の機材なら失敗は無いかって? ……あります。でもそれは本気で洒落にならないので、こちらもテンションを上げて対峙する。具体的には、取説をじっくり読むのである。最近のカメラのマニュアルはなかなか読みでがあるので、ただ眼を通しているだけで仕事気分に浸れるのだった。
 まあそういうことの反動もあって、趣味の写真は旧い機材ばかり使っている。大半は機械式のカメラで、取説は付属しないことが多い(稀についてくることもあるけど独語や露語で意味が分からない)けれど、使い方がわからずに往生したことはあまりない。古典カメラの良いところは、いちげんさんに優しいところである。

 さて、本題の国産カメラである。日本の写真機製造の歴史は欧米にさほど後れをとらずに始まったから、道を辿れば戦前のカメラに行き着く。でもそれは有史以前の考古学にちかい領域の話で、メイドインジャパンが真に輝きを放つようになるのは戦後の経済成長期以降のハナシだ。個人的には1950年代なかばから70年代のオイルショックまで、ほぼ二十年の間に国産カメラの黄金時代があるような気がしている。
 と、こう書くとなんだかそこで終わったような雰囲気だけど、もちろんそうではない。そうではないのだけど、ドイツの光学・機械技術に学んで追いつこうと切磋琢磨していた時代のカメラには、チャレンジャーとしての気概が見える。それが製品に独特の品格を与えていると感じるのは、たんなる懐古趣味のせいだろうか。


2004年03月03日掲載

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