* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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ハンガリーの首都、ブダペスト郊外の公園にて。映画でおなじみの移動遊園地はサーカスなどと同様、ロマ(ジプシー)のひとたちが深くかかわっているらしい。背景の無味乾燥な集合住宅が社会主義の時代を忍ばせる。
Pentax ESII + SMC Takumar 28mmF3.5 FUJIFILM Neopan400 Presto Exposure Data:AE



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子馬と少女。ふだん競走馬ばかり観ている目には、素朴なワークホースの体型が新鮮に映る。それとも騾馬だろうか?
Pentax ESII + Carl Zeiss Jena Flektogon 35mmF2.8 FUJIFILM Neopan400 Presto Exposure Data:AE



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世界最小? のM42マウント機、フジカST605。応答速度が速いSPD受光素子を搭載したマニュアル機で、測光はセルフタイマーレバーに隣接した丸いノブを押して行う(絞り込みノブ兼用)。シャッターの最高速は1/700秒までだけど、このボディに似合う小口径のレンズを組み合わせれば特に痛痒は感じない。レリーズタイムラグの少なさは天下一品で、街頭スナップにもっとも適したM42機かもしれない。装着したレンズはツァイス・ゾナーの流れを汲む旧ソ連製ジュピター9・85mmF2。

東京レトロフォーカス Special Edition
『ちょっと旧い国産機を使ってみよう #3』


 ペンタックスESIIで生じた露出のバラつきは、露出計の応答速度が原因だった。どういうことかというと、カメラボディに内蔵されたCdS(カドミウム・セル)という素子が光の変化に素早く追従できないのだ。これは同時代(70年代なかば頃まで)のカメラが共通して抱える弱点というか、まあクセのようなものである。この機種に固有の不備ではないのだけど、現代のAE機に慣れきった僕はこのあたりの事情を理解するのにすこし時間がかかった。
 ファインダー内の露出計指針を観察しているとよくわかるが、ESIIの露出計はレリーズボタンの半押しで針が動き始めて安定するまでの作動時間がやや長い。メーター上端の定位置からは勢いよく離れるが、最後の指示値あたりでは空気が漏れた風船のようにふわりと着地する。これがSPIIのようなマニュアル機なら指針を見ながら絞りとシャッター速度を調節するから、わりと問題は生じにくい。でもESIIのアドバンテージであるAEに頼って「レリーズを一気に押し込む」ような使い方をすると、場合によっては露出のバラつきを生じる。
 まあこういう重箱の隅をつつくような論評は、昔のカメラには酷である。およそ三十年前のカメラが今とおなじ性能、おなじ使い心地であるはずがないのだ。その物品のクセをつかんで使うのも愉しいものだし、古典カメラ使いならそれくらいのゆとりは欲しい。僕のアタマの一部はそうやって寛容なところをみせるのだけど、他方では「意味無いじゃん」と文句を言う。そうやって理由をつけて別の機種を探しているのだから、まったく困ったものである。
 では露出計に応答速度が速い素子を使ったボディならどうか。1970年代のなかばというと、ちょうど一眼レフカメラの露出計にSPD(シリコンフォトダイオード)が普及しはじめたころである*。ところがM42マウント機もこの時期を境に市場から消えていくのだ。レンズマウントと露出計はいっけん関係性が薄いようでいて、実は自動露出制御という点で深い関わりがあるからだ。
 実はM42マウントにはレンズ脱着の手間(ぐりぐりとネジ込むのに時間がかかる)だけでなく、レンズとボディの精密な連携が苦手という問題点がある。これはネジ込んで収まる位置を正確に管理できないためで、オート絞りを内蔵するレンズでも鏡胴の距離指標が真上に位置せず、センターを外れて止まる例は多い。プリミティブな機構ならそれで問題はなかったのだけど、いずれにせよこの規格は発展性が望めず絶滅する運命にあったのだ**。
 調べてみると、M42マウントでSPDを積んだボディはいくつか存在する。僕が選んだのはフジカST605、1976年発売のコンパクトなカメラだった。



*注1:世界初のSPD搭載機はフジカST701で、1970年の発売。フジカSLRはこの初代機からすべて露出計の受光素子にSPDを採用していた。

**注2:M42マウントで扱える情報は絞りの開閉に留まるが、最新のAFレンズは鏡胴内にROMを内蔵してボディとの間で数多くの情報をやりとりしている。多数の電気接点を確実にコンタクトさせるには、精密に加工したバヨネットマウントを用いるのが最善のやり方で、停止位置がアバウトなスクリューマウントはまったく適していない。


2004年03月17日掲載

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