* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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古民家の縁側の座敷わらし。旧型プラナーとアスティア100Fの組み合わせは色温度が低く、小日向のぬくもりがよく出る。
Hasselblad 500CM + Carl Zeiss Planer C100mmF3.5 FUJICHROME ASTIA100F Exposure Data:1/125sec. F5.6



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この日は35mmフィルムでも撮った。ロクロクと36×24mmのいわゆる「ライカ判」はタテヨコ比率がかなり違うので、同時に使うにはアタマの切り換えが必要だ。スクエアヘッドを丸くする訓練に良いかも。
Leica M3 + Summicron-M 35mmF2 FUJICHROME ASTIA100F Exposure Data:1/125sec. F5.6



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スクエアフォーマットカメラギャラリー、第1弾は僕の大好きなチェコのカメラを紹介しよう。メオプタ社の「ミローナ2」は第二次大戦直後の数年間に造られた目測フォールディングカメラで、コンパクトなボディは重量550gと超軽量。折り畳み式のニュートンファインダーをはじめとする各部の造作はシンプルそのものだが、なぜかレンズボードには1mmのチルトダウン機構が付いている(1型には非装備)。はたしてどういう用途を想定したのか? レンズは3枚玉のミラール80mmF4.5。使いやすくて良く写るカメラだけど、軽量ボディとレンズ側レリーズの組み合わせはブレを招きやすいので注意が必要。

スクエアフォーマットの誘惑 #1

 文豪・夏目漱石は「智に働けば角が立つ」といった*。
 角が立つというのは、鯱張(しゃっちょこば)って理屈を通すと世渡りはうまくいかないよ、という意味だろう。僕みたいにイデオロギーが確かでない人間には実感できないけど、まあ文豪の言によらず四角いものを丸くおさめるのは大変だろうと思う。
 そういえば英語圏でも筋金入りの頑固者をsquare headと呼ぶらしい。スクエア=四辺が等しい正方形を、融通がきかない人間のイメージに重ねたのだろう。もともとスクエアには「公正な」という意味もあるのだが、それも度を超すとstone head=石頭、的なニュアンスになる。アタマが四角い奴というと、特にアメリカではスウェーデン系移民を指すという。ヴァイキングの末裔はなかなか自説を曲げないことで有名なのだそうだ。
 写真の世界でも、四角と丸はなかなか緊張感のある関係である。レンズは丸くてフィルムは四角い。四角いレンズというものも存在するけど、写真撮影用のレンズは俗に「玉」と呼ばれるだけあって、まず間違いなく丸い。なぜ丸いかというと、精密なレンズをいちばん効率よく作るにはこの形状が向いているからだ。ならば丸い写真もあって良いのではないか?
 確かに、全周魚眼というレンズを使うと丸い写真が撮れる。正確には円の周囲が真っ黒の余白(?)になるだけなのだが、ほとんどの写真用レンズはこの全周魚眼とおなじように、正円の像を結ぶものだ。専門用語でこの円を「イメージサークル」と呼ぶ。フィルムはその円から四角を切り出すわけで、これはレンズ側からみれば無駄が多いというか、せっかく像を結んでいるのに切って捨てるとは何事だ、責任者出てこい、といいたいところだろう。
 いっぽうでフィルムや印画紙が四角いのは、これは正当な理由がある。こういう感材は製造工程で最初におおきなものを作って、それを細かく切り分けていくから、最終的な製品を丸くつくると資源のムダになる。というのは二次的な理由で、ほんとうは写真が最終的におちつく情況(書籍や壁面やパソコン画面)が四角の方が収まりが良いからだ。今の世の中、丸い写真が活きるのはCDの盤面印刷くらいだろう。
 余談はさておき、レンズのイメージサークルを最大限に有効活用するなら、四角の比率はすべての辺が等しい正方形になる。いわゆる「スクエアフォーマット」だ。この規格にはいろいろあるけれど、いちばん有名なのは6×6センチのロクロク判である。二十世紀のなかば、その代表的な機種を作ったのはスクエアヘッドのスウェーデン人だった。

●モデル:脊山麻理子


*注:小説「草枕」冒頭の一節。原文は「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくにこの世は住みにくい」と続く。このリズミカルな四十余文字に人間社会の葛藤を凝縮した、まさに不朽の名文である。


2004年04月14日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部