* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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短命に終わったフレクトゴン65mmで。視野率の低いボディを使う場合はフードの選択にご注意。
Arsenal/Arax 60MLU + Carl Zeiss Jena Flektogon 65mmF2.8 FUJICHROME ASTIA100F Exposure Data:1/125sec. F8



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ロケ写真は次回より新シリーズに突入、ご期待ください。
Leica M3 + Elmarit-M28mmF2.8 FUJICHROME ASTIA100F Exposure Data:1/125sec. F8



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ハッセルブラッド500C/Mと、美しい仕上げのプラナーC80mmレンズ。レンズの前玉周囲にある「T*」の刻印はツァイスの多層膜コートの商標で、一説によれば同社が70年代初頭に提携関係にあった日本の旭光学(現ペンタックス)との共同開発という。真偽は定かでないが、確かにこの時代の両社のカメラ用レンズにはほとんど共通設計のものもある。レンズ鏡胴上部の赤い指標は可動式の被写界深度マーク。ピントリングと連動する方式で、これはレンズシャッターを担当したフリードリヒ・デッケルの特許である。

スクエアフォーマットの誘惑 #12

 ハッセルブラッドにはいくつかの重要な「使用上の注意」がある。もっとも初歩的なそれは「撮影に際してマガジンのスライド(引き蓋)を抜かないとレリーズできない」ことだ。これはハッセルブラッド一流の安全設計で、これが無ければうっかりスライドを挿入したまま撮影、未露光のネガを作る可能性がある。
 逆にこのスライドを挿入しないと、マガジンはボディから外せない。これも通常のカメラの「裏蓋ぱっかり事件」を防ぐ役割がある。またピントフードはマガジンを外さないと脱着できない。これも不意の脱落を防ぐハッセル一流の親心である。
 レンズシャッター機の場合、さらに重大な禁じ手がある。レンズの脱着にはシャッターを常にチャージしておく必要があることだ。これを怠ってレンズの装着を試みる(レンズ側が非チャージ状態にあるか、ボディが巻き上げられていない状態)と両者はドッキング不能となる。じっさいここで結合を拒否されれば問題はないのだが、下手に装着できてしまうと問題が大きい。レンズが外せなくなる(こともある)のだ。これは即、重修理である。
 だからうっかり者のあなたがもし明日にでも中古のハッセル500C/Mを手に入れたら、ボディの上の目立つ部分に「引き蓋確認」「チャージ確認」と大書し、撮影時には指さし確認で「スライドよーし」「チャージよーし」と声を出すのを忘れないようにしたい。
 シャッターの低速側を使う場合も注意が必要だ。レンズシャッターの作動シークエンスが終了するまで、レリーズボタンから指を離してはいけない。これはボディ後端の遮光幕とレリーズボタンが連動しているためで、シャッターの作動はこの動作よりも遅れる場合があるので、指を離すと露光途中で遮光幕が復帰して露出不足になる可能性があるのだ。
 撮影時にはミラーショックにも留意した方が良い。35mmフィルムを用いる、いわゆる「ライカ判の小型カメラ」と違って、ハッセルブラッドに代表される中判のSLRはミラーの質量が段違いに大きい。ミラーの駆動にはショックを軽減するバランサーやダンパーなどの特別な仕掛けは存在しないから、「シャカポン」の「ポン」でボディには上向きの力がかかる。よくライカ判カメラで「手持ちのブレ限界は焦点距離分の1秒」などというけれど、中判SLRはその倍くらいの安全マージンを見越しておくべきだろう。
 初期の500C/Mやそれ以前の500C、1600Fなどの場合、逆光での撮影にも注意したい。60年代あたりまでのハッセルはボディの内面反射に寛容で、たとえ最新のレンズを装着してもここが原因でフレアを引くことがある。これは市販の植毛紙などを貼ることで解決できるし、このフレアを「軟らかい描写」といって珍重する向きもあるのだが。
 ただしこうした構造上の問題は、カメラの欠陥ということではない。上にも書いたように、ハッセルブラッドは安全設計の行き届いたカメラであって、それは使い手がきちんとカメラを理解していれば済むことだ。またこのカメラの基本設計が1940年代後半ということを考えれば、その複雑な機構が半世紀以上を経た今も現役で通用することは驚異である。これはシステムとしての発展性とおなじく、ビクター・ハッセルブラッドという人間の良心と先見性に因るところが大きいのではないか。僕がこのカメラを使っていつも痛感することは「ハッセルは思想だ」という事実なのである。

●モデル:脊山麻理子


※2004年8月の「東京レトロフォーカス」はお休みをいただきます。脊山麻理子さんの作品特集とスクエアフォーマット編の続きは9月より再開、お楽しみに。



2004年07月28日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部