* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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前月に引き続き再登場のクレア。年に1回しか撮れないけど、いつもいい目をしている。
Voigtlander Vito-B + Color-Skopar 50mmF3.5 FUJICHROME Provia400F
(C)Keita NAKAYAMA



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ビトーBの距離目盛りで無限遠の手前は60フィート(約18メートル)。つまりこういう写真でも自分でちゃんとで測距しろ、とカメラは言っているのである。
Voigtlander Vito-B + Color-Skopar 50mmF3.5 FUJICOLOR Superia100
(C)Keita NAKAYAMA



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モラヴィアの宝石「オペマ」。チェコスロヴァキア・メオプタ社が1950年代に製造した美しい小型カメラで、シンプルな造りながら同時代のライカコピー機とは一線を画す独自性を持つ。下の「オペマIa」は上の「IIa」から距離計を外した目測バージョン。単なる廉価版というより、距離計に連動しない一部の交換レンズ用に特化したボディだろうか。ファインダーはIaの方がはるかに明るく、スナップ機として使うならこちらを選ぶ。ちなみにこの目測オペマ、現在さる工房でレストア&塗装中(その顛末と併せた「オペマ特集」も準備中です)。

目測カメラの憂鬱 #4

 さてそれでは、目測カメラを首から下げて撮影に出ることにしよう。このカメラには得意とするシチュエーションとそうでない場面があって、これは普通のカメラよりもずっとハッキリ分かれる。でも最初はあまり難しく考えず、とりあえずフィルムを通すのが吉。

 使い方は難しくない。露出を合わせ(シンプルを旨とする目測機は露出計を積んでいないものが多いので、単体露出計が必要になる。無ければフィルムのパッケージに記された露出推奨値でも構わない)、被写体までの距離を読み取って「何メートル何センチ」という数字に置き換え*、レンズ鏡胴の距離指標をそれに合わせる。あとはファインダーで構図を決めてレリーズするだけ。簡単でしょう。
 で、アガリを観てみると……いつもとおなじように良い写真が撮れている、という方。ここから先をお読みいただく必要はありません、そのまま創作を続けてください。反対に、いつにも増してピンボケの嵐で「何じゃこりゃあ」という方。私も最初はそうでしたのでご安心を。
 真面目な話、目測で最初から完璧な合焦ができるひとはまずいない。ピントを無限遠に固定して富士山ばかり撮っていれば話は別だろうけど、そういうジャンルの写真はまた別のカメラを使うべきだ。目測機は100パーセントの成功率を望むカメラではなく、むしろ失敗のリスクをモチベーションに変えられるひとのためのカメラなのだ。
 って、我ながらワケの分からない理屈をこねてますね。

 上にも記したように、目測カメラには向き不向きがある。目測機が得意とするのは、なんといってもストリートスナップ。ピント合わせの手順を省略できるから、慣れれば心が動いた瞬間を切り取れる。
 逆に不向きなのは、ポートレートや静物写真など。こういう写真はじっくりピントを合わせて撮るべきだし、背景をボカして撮ることも多いから、一眼レフを使った方がいい。モデルさんの手前の睫毛にピントを合わせるなんて不可能だ。巻き尺があればなんとかなる?
 それが、そうともいえない。理由はまた後で記そう。
 無限遠を多用する風景写真なんかも失敗がすくないけど、目測カメラで富士山とか撮るのは、なんだかカメラと被写体のノリが違う気がする。ショパンをウクレレで弾いてるみたいだ。それに趣味の写真は、失敗しなければ良いというもんじゃない。
 とはいえ、ピンボケ写真の量産が続くと、これは心と財布に重く響く。だから何とかして合焦の確率を上げていかないといけない。
 目測で難しいのはどういう状況下というと、特に被写体に寄って撮ったとき、おおむね3メートル以内だ。これはレンズの繰り出し量が増えるとピント面が浅くなるためで、特に絞り開放で最短距離(1メートル弱の機種が多い)付近まで寄ったりしたら、これはもう当たるも八卦、の世界である。
 とはいえ、目測機での撮影の成否は、すべてこのピント面をどう使うかにかかっている。そこで次回はこの対策をじっくり考えてみよう。


*注:現在市場に流通している目測機には、距離目盛りがメートル法ではなくフィート表示で記されているものがある。これはおもに米国からの輸入品だ。「1フィート=約30センチ」という度量衡換算は難しくないので、実用上それほど大きな支障はない。どうしても気になる場合はメートル換算したスケールを自作し、上から貼り付ける手もある。


2004年11月10日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部