* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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大口径レンズの開放描写をどう使うか。背景をボカせば被写体の立体感は強調されるものの、なんだかレンズのカタログみたいな写真になることも多い。これは思い切り低速シャッターを切れる条件で撮ったカット。手ブレで光学性能は帳消しだけど、暗いレンズでは撮れない絵であることも確か。
Zeiss Ikon Contax IIa + Carl Zeiss Sonnar 50mmF1.5 FUJICHROME ASTIA100F
(C)Keita NAKAYAMA



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話題の新製品「ナチュラ1600」をライカに詰める。暗いレンズを常用レンズに変える魔法のフィルムだ。蛍光灯などの人工光源でも自然な発色が得られるが、流石に水銀灯の緑カブリは残る。ただし人物の肌が自然な暖色を保つので安心して使える。ライカの低速シャッターは慣れれば1/8秒でも手ブレしない。
Leica M3 + Orion-15 28mmF6 FUJICOLOR Natura1600
(C)Keita NAKAYAMA





好きなカメラ、嫌いなカメラ #6

 路上の一瞬を瞬間的に切り取る写真で、画面構成とピントを両立させる。現在のカメラを使えば造作もない作業だけど、キャパやブレッソンなどが路上でスナップをものにしていた当時にあって、この作業を可能にするほとんど唯一の道具といえばコンタックスである。なぜって測距用と構図用がそれぞれ独立したライカの二眼ファインダーでは、視線を移すタイムラグが不可避だからだ。
 バルナック型ライカ、あるいはその亜種にあたるカメラで路上スナップを試みてみればすぐにわかることだが、常に動いている被写体を追えばピントの的中率はなかなか上がらない。これは絞りの効果で被写界深度を深くすればカバーできるとはいえ、戦前のキャパやブレッソン、そして名だたるストリートスナップの名手たちは被写体ににじり寄るようにして撮って、しかもピントは「ここしかない」ただ一点に合っている。コンタックスで撮ったのだろうか?
 いや、もし彼らのような傑作が撮れないなら、それはカメラよりも自分の腕を恥じるべきだ。それにバルナック型ライカのファインダーだって良い点がたくさんある。着色が強くて暗いコンタックスのそれよりも視野は遥かに明瞭だし、なにより簡潔な構造でカメラがずっと軽くてコンパクトだ。
 とはいえ戦前ライカの設計者、オスカー・バルナックも自身のカメラの欠点は自覚しており、彼の晩年の試作機「ライカIV型」(1935年)ではコンタックスばりの一眼ファインダーを載せてみせた。しかもライバルにない売りとして、複数のレンズに対応する視野枠やパララックス自動補正機構も積んでいる。これは凄い、すぐに発売してドレスデンの連中を出し抜こう。ライツの経営陣がそう考えたとしても不思議はないが、このIV型はけっきょく製品化されずに終わってしまう。
 理由は定かでない。もしかするとライカ社の社史に載っているかもしれない。たぶん戦争を目前に控えた時代、量産性に優れたIII型の増産が優先されたのだろう。かの独裁者が率いる帝国はこの時期、外貨を稼ぐカメラの輸出にことのほか熱心だったそうだ。

 で、話はいきなり戦後に戻る。なぜコンタックスはライカになれなかったのか。……M型ライカは見事に戦前コンタックスになりおおせたというのに。

(次号は「maRiko's photo diary」を掲載します)

●モデル:野口早依子


2005年02月23日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部