* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number  


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コンピュータ制御の工業用ミシンを操る平井さん。右手で操作しているのはプログラム入力用のキーボードで、十字キーの操作によってミシンの動き(平面上のXY軸に置き換えられる)がパターン化され記憶される。一度プログラムを完了すれば同じパターンの縫製が自動的に行われる。
Leica M5 + Summilux 50mmF1.4 FUJICOLOR New Pro400
(C)Keita NAKAYAMA



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これは何でしょう? 古典カメラファンならすぐ分かると思うけど、答えは「ライカ用ケースのレンズ部を覆うカバーのプレス型」。砲金製のオス型とメス型(滅茶苦茶重い)の間に革を挟んでプレスする。革素材は事前に水分を含ませて柔軟性を高めておくそうで、このあたりは革靴の製造とおなじ技術が使われている。
Leica IIIg + Summitar 50mmF2 FUJICOLOR New Pro400
(C)Keita NAKAYAMA




 

『職人の革ケース #5』

 平井製作所の一階工房に置かれた工作機器は、いずれも量産を意図した本格的なものばかり。なかには型抜き用プレス機のように「十年一日?」で不変の機械もあるけれど、他はマイクロプロセッサで温度や精度を管理する自動工作機器である。自動化という面ではこの日に持参した僕のカメラよりずっと進んでいる。
「いぜんはここでバッグをつくっていたのです。ええ、何人か職人を雇って。(革製品メーカーの生産拠点移設によって)製品をカメラケースに切り替えてひとりでやるようになったとき、ここにある機械をなるべく活かす方法を考えました」
 その工夫とは、たとえばケースの角のカーブを綺麗に出すために革の厚みを変える(角の内側を微妙にザグる)治具を考案して自作するとか、表面のシボ革模様に換えて滑り止め効果の高いダイヤカットパターンを導入する、といった工程と意匠の両面に現れている。いずれも下請けに外注すれば即コストアップにつながるところで、小規模ながらもすべての工程を内製できる利点を活かす平井さんならではの手法である。
 とはいえ、工程の自動化にともなう悩みもある。ひとつには少量多品種製造がむつかしいことで、これは大手下請けのバッグ製作から転身した平井製作所の宿命かもしれない。ライカのように人気のある機種でも、革ケースとなると販売の絶対量はおのずと限られるし、多少高価でもボロでも純正品を崇拝するひとも多い。量販が見込めない機種のために高価な金型や手間のかかるパターン記憶をやっていたら、製品はカメラより高価になってしまう。
 もうひとつ、これはかなり深刻な問題なのだが、自動化された工作機器の製品寿命ということがある。
「ここにある工業用ミシンは、メーカーでもそろそろパーツが払底しはじめています。ですからあちらに部品取り用としてもう一台、使わないミシンも保存してあります。縫製パターンを記憶させておくフロッピーも(紙ケース入りの5インチFD!)もう新品での入手は困難になりました」
 メーカーに補修部品のない機械をニコイチで蘇生させるとは、なにやら古典カメラ趣味を思わせる話である。

※取材協力:平井製作所


※中山さんの撮影現場やご自宅に潜入取材をした・・・

 ◆今週の『中山さんが動クンです!』



2005年05月11日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部