* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number  


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平井製作所の人気商品、カメラ用ストラップの製作工程。剥き機で厚みを調節した革素材を裁断機にかけると……。
Leica M5 + Summilux 50mmF1.4 FUJICOLOR New Pro400
(C)Keita NAKAYAMA



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こうやって12ミリ幅の革ストラップが一気に出来上がる。パスタマシーンでフェットチーネをつくるあの要領だ。この革の色はライカ純正ケースの近似色である焦げ茶。平井さんが使う革はドイツで鞣した輸入品を日本で染色しており、発色は微妙に違う(純正品の方が僅かに赤みが強い)が、これは焼けやスレなどの経年変化によるものか。じっさいには殆ど気にならぬほどの差である。
Leica M5 + Summilux 50mmF1.4 FUJICOLOR New Pro400
(C)Keita NAKAYAMA




 

『職人の革ケース #6』

 平井さんのものづくりがユニークなところは、職人の技を機械に置き換えていることである。自動機械を駆使した製造工程は「クラフツマンシップ」と相反する印象を持つひともいるだろう。でも往時の革ケースにしても手縫いの部分はほとんどなく、ただ職工がミシンがけをしていただけなのだ。
 じっさいに平井さんが手がけたバルナックライカの革ケースを手にしてみると、僕が持参した純正品に劣らぬ仕上がりである。手塗りのコバ仕上げなども美しいし、むしろミシン目の乱れなどが少ない分、純正品より品質感が高いともいえる。まあ年月を経た品にくらべて新品はパリっとシャキっとしているので、これは公正を欠く比較ではある。
 平井さんの革ケースやストラップの品質感は、素材に因るところも大きいらしい。
「ストラップにはドイツ製の革を使っています。伝統的なタンニン鞣(なめ)しによる最高級品です。この革に出会えたからストラップをつくろうと思いました」
 革製品といえばイタリア製、というイメージも強いのだが「ドイツもイタリアも革素材はヨーロッパのあちこちから仕入れているので差はありません。違いは鞣しをはじめとする後処理の部分に出る」のだそうだ。ちなみに革素材の品質は生体時の飼育条件でも決まるといい、「アメリカ製などは傷が多いし、尻の良い部分に平気で焼き印を押したりする」ので使いたくないという。また平井さんは革の部位にも留意し、柔軟性が必要なパーツは首や背中から取るなどの工夫を凝らしている。
 素材に対するこだわりは縫製の糸にもおよぶ。強度を要求される部分にはケヴラー(デュポン社が開発した高強度繊維、防弾チョッキなどに使われる)でステッチが入れられ、耐摩耗性を向上させている。最新の技術が反映されているわけで、おそらく純正品よりも長持ちするだろう。
 取材の折、そろそろヤレが目立ってきたライカ純正ケースのストラップを購入させていただいた。IIIg用ケースは直付け金具に直接取り付けるタイプ(=非分解構造)なのだが、平井製作所のカタログにはボディの吊り金具に付けるタイプのみ設定されている。また長さは80cm〜100cmで三種類あるけれど、できれば美錠付きで長さ調節可能としたい。
 平井さんにお願いすると、快く特注オーダーに応じていただけた。必要な長さを採寸するところなど、ちょっとスーツをオーダーするような感覚で晴れがましかった。

※取材協力:平井製作所


※中山さんの撮影現場やご自宅に潜入取材をした・・・

 ◆今週の『中山さんが動クンです!』



2005年05月18日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部