* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number  


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平井さんにお願いしてIIIg用革ケースのストラップに美錠をつけていただいた。実機を持ち込めばその場で確認しながら長さ調節が可能。こういうオーダーを快く受けてくれる工房はありがたい。
Leica M5 + Summilux 50mmF1.4 FUJICOLOR New Pro400
(C)Keita NAKAYAMA



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次回より新シリーズ開始。おなじみ脊山麻理子さんも被写体として復帰します。ご期待ください。
Leica IIIg + Summitar 50mmF2 FUJICOLOR New Pro400
(C)Keita NAKAYAMA




 

『職人の革ケース #7』

 日本の生産現場の空洞化現象に煽りをうけて「半自動化」を余儀なくされた? 平井製作所だけど、ものづくりに対する情熱は失われていない。むしろ齢七十にして(失礼)自分のアイデアを形にできる自由を平井さんは謳歌しているようにも見受けられる。
「ひとりで出来ることは限られてますけど、ここでこうして仕事を続けているおかげでいろいろなひとと知り合えます。外国のお客様が見えることもあります(ついせんじつもドイツ人が通訳連れでやってきたそうだ)。旧いカメラを愛好するひとと直接話ができて、それが次の仕事のアイデアにつながっていく。愉しいですよ」

 二階の工房に戻ってお話を伺っている途中、平井さんは僕のカメラに目をとめて「そのライカは戦後型ですか」と言う。ええ、1950年代につくられたバルナックの最終型です。首から吊したIIIgを手渡すと、
「軍艦部がちょっと背が高いですね、スロー側のダイヤル位置もすこし違うなあ」ご明察である。しかしいっぱしの愛好家でもそこまではなかなか見抜けない。よほどカメラに詳しいのだろうか。
「いやいや、昔は自分でカメラを持って撮ったりしたけど、ライカなんて夢にも見ませんでした。うちにもそこに一台あるだけです」
 と平井さんが指差す方向に目をやると、作業机の端に年季の入ったM2が無造作に置かれている。ケースづくりの採寸に必要と、都内の中古カメラ店で「ボロで良いから安いのを」と言って購入されたのだそうだ。手にすると積年の酷使が伺われる外観とうらはらに、機関好調な固体特有のスローシャッターの響きが印象的であった。

 新調したストラップの付け根に右手を添えて歩く帰り道、路上でスナップしながら考えた。ケースに入れて大事に使われるカメラもあれば、あのM2のように道具に徹して役目を終えていくものもある。カメラにとってどちらが幸せか、その問いに意味はない。機械はなにかを考えたりしないものだ。すべては使い手の気持ちしだいである。
 でも僕のようなへそ曲がりの気持ちに応えてくれる道具を、取り敢えず手を伸ばせば届くところに用意してくれるひとがいるのだ。
 日本の町工場もまだまだ棄てたもんじゃない。

※取材協力:平井製作所

※制作協力:脊山麻理子


※中山さんの撮影現場やご自宅に潜入取材をした・・・

 ◆今週の『中山さんが動クンです!』



2005年05月25日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部