* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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ナチュラSの縦構図で撮った素材の中央部をトリミング(左右フルサイズ、天地は均等にカット)。超広角レンズでもF1.9の絞り開放付近(正確な値は不明)・近接撮影での被写界深度はこのように浅い。AFロック後に被写体が動いたため後ピンだが、合焦面では優れた解像性能が観察できる。表情や雰囲気の変化に追従できるレスポンスは秀逸で、ライカと併用しても違和感がない。
FUJIFILM NATURA-S + Super EBC FUJINON 24mmF1.9 / FUJICOLOR Reala ACE
(C)Keita NAKAYAMA



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M5の内蔵露出計はきわめて使いやすく、画面の任意の部分を測光して正確な露出決定ができる。「出た目」からの補正も素早く行えるためリバーサルフィルムの常用も可能。けっして万能ではないが、この安定感はさすがのライカである。
Leica M5 + Elmarit 135mmF2.8 / FUJICHROME Astia100F
(C)Keita NAKAYAMA



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M型ライカの望遠レンズ二態。M3に装着しているのは上の写真で使った通称“ゴーグル付き”エルマリート135mm。ライツ社はこのレンズでRF機が苦手とする望遠レンズの運用に一定の解答を示した。いっぽうのM5に装着したレンズは最新のアポ・ズミクロン90mmアスフェリカル。アポクロマート光学系と非球面レンズの組み合わせで、より高次の収差補正を目指したライカの力作だ(作例写真は次号以降に掲載します)。
(C)Keita NAKAYAMA

『ライカとナチュラな日々 #4』

 ライカM5がデビューしたのは1971年のこと。「初代M」たるM3とその姉妹機であるM2、そして両機の正常進化型であるM4の後を襲う形で市場に投入された“第5のM”は愛好家に少なからぬショックを与え、その衝撃は戸惑いに、やがて議論に発展していく*。
 大きな成功を収めたM3の登場から足かけ17年、この間ライツ社はM型に細かな改良を加え、市場の要求(と生産性の向上)を満たすべくアップデートを続けた。ファミリーの累計生産台数はおよそ35万台におよび、特殊用途向けにモディファイを加えた派生機種も多い。
 それだけの実績を持つシリーズの後継機が、なぜ議論を巻き起こしたのか。それはM5がそれまでのMの系譜とは、まったく異なる意匠を纏(まと)って現れたためという。歴史とは後世に定着した解釈を指す言葉だが、もしこの説が当たっているとしたら、革新的なM3から17年の間にライカは保守に転じていたことになる。
 ことの真偽を質(ただ)すには、1960年代後半から70年代初頭という時代を俯瞰する必要がある。当時、世相には長期化するヴェトナム戦争が暗い影を落とし、これに反発するカウンター・カルチャーの動きも活発化していた。そうした社会の激動を伝えるべく、TVとグラフジャーナリズムは膨大な映像を世界に発信していったのだ。
 そして、そこに要求されたのは「即時性」であった。

 写真における即時性。それは写真機趣味的にいえば「意志決定からレリーズに至る手順の少なさとスムーズさ」であり、写真趣味の語り口では「思ったままの写真がサクサク撮れる度」となるだろう。ただし商業写真の分野でこれを語ると、撮影後の現像処理や印刷プロセスまでも含むスケールになり、昨今のプロ機材デジタル化はまさにこの部分のスピードが評価された結果である。
 話を戻すと、名機M3で高い評価と信頼を勝ち得たライツ社は独自のペースでシリーズの発展を図った。だがその大陸的なペースは徐々に時代の流れとズレていく。M3に替わるM4はそれなりに好調なセールスを上げていたけれど、報道の最前線にいるフォトグラファーたちは別のカメラを選ぶことが多くなった。もはやM3の思想は通用しないのか……。
 ライツ社はこうして「M」をリセットし、ふたたび革新の座に着こうとする。仮想敵は東洋の島国から送り出される一眼レフたちであった。

※制作協力:脊山麻理子

*注:M5登場時までのM型ライカの系譜と主な生産年を記すと、M3(1954-1967)M2(1957-1969)M1(1959-1965)M4(1966-1971)となる。M4は寿命が短いが74年とその翌年に再度生産された。またM1はM2から距離計を除いた特殊モデルでごく少量の生産。同様の用途限定モデルは他にも数種類存在しているため、M5を「第5のM」とするのは必ずしも正しくない。


※中山さんの撮影現場やご自宅に潜入取材をした・・・

 ◆今週の『中山さんが動クンです!』



2005年06月29日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部