* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文/中山慶太 --->Back Number


写真
---> 拡大表示

絞り開放1/25秒。開放でも中央の親子はしっかり描写されています。(撮影・文:正木正)
Zeiss Icon TENAX + Novar-Anastigmat 35mmF3.5 / FUJIFILM Neopan 100 Acros
(C)Tadashi MASAKI



写真
---> 拡大表示

絞り開放1/100秒。撮影距離1メートル。ほんの僅かな二線ボケの傾向があるが穏やかです。(撮影・文:正木正)
Zeiss Icon TENAX + Novar-Anastigmat 35mmF3.5 / FUJIFILM Neopan 100 Acros
(C)Tadashi MASAKI



写真
---> 拡大表示

高根写真集団グループ展にて。壁面右側の掲示作品は正木さんの連作「善男善女」。
Leica M5 + Summicron 35mmF2 / FUJICOLOR Pro400
(C)Keita NAKAYAMA

『Guest's Room #1 コンテストの達人』

 クラシックカメラの世界は広い。首から金属の箱を吊した紳士と路上ですれ違うことは多いし、電車のなかで話しかけられることもある。この連載をはじめてから、僕もいろんなひとに教えられたり、助けられたりしている。アマチュアとプロの垣根が低いのがこの世界の良いところだ。
 すれ違ったり立ち話をしているだけではもったいないので、こちらから訪ねてお話を伺うことにした。

 正木正さんのお名前には記憶があった。特徴のある綴りを探してみれば、カメラ雑誌の月例コンテストによく登場する。正木さんはそういうフォトコンの常連で、お仲間の間で「賞金稼ぎ」と呼ばれているらしい。
「コンテストに参加するなら、勝たなければ意味がありませんから」だから選者の嗜好を読んで作戦を練るそうだ。
「でも採算は取れていませんよ。知恵比べで遊んでいるだけですね」
 正木さんは千葉県にお住まいで、船橋の写真サークル「高根写真集団」に所属している。写真評論家の田中雅夫氏(1912年ー1987年:写真家・濱谷浩氏の実兄)がかつて全国に組織したアマチュア写真愛好会のひとつで、昭和37年の創設というから、その歴史は長い。
「田中さんが掲げた会の趣旨というのが“雑誌のコンテストに入選すること”でした。写真は発表しなければ意味がない、多くの人の目に触れるにはコンテストに勝ち抜くべし、という考えでしょう」なるほど明快である。高根写真集団では今でも月イチのペースで例会を開き、会員の作品をコンテスト形式で評価しているという。

 実は正木さんはこの連載でプレゼントに出した目測カメラ「ツァイスイコン製テナックス」の当選者である。それがご縁で写真集団のグループ展にお招きいただき、お話を伺うことができたのだから、旧いカメラは良縁を運んでくるというべきだ。
 会場に掲示された作品もそうだったけれど、正木さんのレンズは人に向けられることが多い。旧い機種(さいきんはライカIIIcを愛用されている由)でも最新のカメラでも、被写体との「間」の取り方が変わらない。それはここに掲載したテナックスの試写作品でも明らかで、正木さんはレンズの描写性を測りながら、カメラが切り取る空気の量をきちんと読んでいるように思える。これは一朝一夕に身に付く技ではない。

 写真は修練の積み重ねだ。それにはコンテストで人と競うことも有効だろう。でも自分が本当に撮りたいものを撮ることも大切では、という僕の青臭い質問には、即座に「いえ、コンテストは滅私の心がけが大切です」と笑顔が返ってきた。
 人を食ったような答えだけれど、本心は正木さんの作品に出ていると思う。


2005年07月06日掲載

<--Back     Next-->



Copyright :
マカロニ・アンモナイト編集部