* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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Leica M3 + Super Anglon 21mmF3.4 FUJICHROME Astia100F
(C)Keita NAKAYAMA



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FUJIFILM NATURA-S + Super EBC FUJINON 24mmF1.9 / FUJICOLOR Reala ACE
(C)Keita NAKAYAMA





東京レトロフォーカス Special Edition
『アレゴリー(1)』


 ある米国人の作家があらわした作品に、灯台が舞台のお話がある。人里はなれた岬の灯台に働くふたりの人物(一人称の「私」とその友人)が出逢う、一夜のできごとを綴った掌編だ*。すぐれて叙情的な作品の世界を損ねるかもしれないが、あらすじを辿ってみよう。

 十一月のある夜、岬は霧に包まれていた。次の日から休暇で灯台を留守にする「私」に向かって、友人は海の不思議を語って聴かせる。そうしている間も、海を航行する船のため、届かぬ灯りに代わる霧笛が鳴り響く。やがて湿った夜の空気を切り裂く、泣き叫ぶようなその音に導かれ、深海からの訪問者が姿を現す。それは百万年もの時の流れを生きながらえた恐竜だった・・・・・・。

 友人は「私」と恐竜に語りかける。
“君は二度と帰らぬものをいつまでも待っている”
“君が想っている相手は、君が想っているほど君のことを想ってはくれない”
“君の人生なんてそんなものだ”

 深い海の底を覗くような諦観に満ちた友人の言葉には、おそらく作者の人生観が投影されているのだろう。人との交わりを避けて岬に暮らす彼は、泣き叫ぶ灯台を死に絶えた仲間と錯覚してやって来た恐竜の心を理解しながら、それを否定するかのように霧笛を止めてしまう。恐竜は困惑し、やがてそれは絶望に、そして怒りに変わる。
 期待していた相手に裏切られたときの落胆。まるで永遠と思える待ち時間を経ても果たされない約束。他人に一方的な期待、過剰な思い込みを寄せれば、それは痛みとして自分自身に還ってくる。これはそういうお話である。

*注:「霧笛(The Fog Horn)」レイ・ブラッドベリ作。短編集「ウは宇宙船のウ(R is for Rocket)」 ─創元SF文庫・刊─ 収録。


2005年09月21日掲載

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