* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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1958年の初代以来現在まで四つの世代を重ねるズミクロン35ミリ。これは1980年に登場した第三世代による撮影。絞り開放からエッジの切り立った画像を提示、反面アウトフォーカス部にもコントラストが立つという「諸刃の剣」でもある。
Leica M5 + Summicron35mmF2 / FUJICHROME ASTIA100F
(C)Keita NAKAYAMA



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築地中央市場の朝、薄暗い場内で桃ナチュラにナチュラ1600を詰めて撮る。背景はもっと流したかったのだが、シャッター速度にはまだ余裕があるようだ。
NATURA-S + Super EBC FUJINON 24mmF1.9 / FUJICOLOR NATURA 1600
(C)Keita NAKAYAMA



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よく知られているように、M型ライカにはアダプターリングを介してバルナック型ライカのレンズが装着できる(逆は不可)。これはつまり1930年代からの光学技術の発達史が1台のボディで俯瞰できるということで、純正非純正あわせて装着可能なレンズはギネスブックものだろう。画像のレンズは1956年製、初代ズミクロン50ミリ。もともとはIIIg用の標準レンズで、M5とのマッチングは外観・操作性ともにいまひとつしっくりこない。ただし沈胴量が少ないため露出計受光部には干渉せず安心して使える(エルマーは衝突してしまう)。
(C)Keita NAKAYAMA

『ライカとナチュラな日々 #15』

 フィルムはいつも出かける前に詰める。一歩表に出たら何が待っているかわからないからだ、とこれはタテマエ半分、期待半分。本心は路上でのフィルム交換をなるべく避けたいからで、また最初の被写体に出会った段階で「しまった、モノクロにすれば良かった」なんてこともある。いちいち気にするのは止めよう。
 M型ライカは誕生から今にいたるまで、例の底蓋を開けてフィルムを装填するお作法を貫いている。これはドイツの製造元に言わせると「裏蓋開閉式はボディの剛性感を損なう」からなのだそうだ。確かにそれも一理あるような気がしつつ、それ以上の理(ことわり)はなさそうな気もするけど、今さらあれこれ突っ込んでも始まらない。
 とはいえM3やM2に比べれば、M5のフィルム装填は天国である。脱着式だった巻き取りスプールはラピッドワインド式の固定スプールに変わり、スリットにフィルムの先端を引っかけるだけで済む。しかもこれを最初に採用したM4と比べても扱いやすさは向上している。所要時間は同時代の裏蓋開閉カメラの3倍、桃ナチュラの6倍といったところ(当社実測値)。装填中、外した底蓋は内側の見事な結晶塗装に見とれたりせず、ジーンズの尻ポケットにでもねじ込んでおこう。
 フィルムを詰め、底蓋のロックキー(他のM型の逆サイドにある)を締めたら空シャッターを二回切って、底部の巻き戻しノブでフィルムのたるみを取る。これで万一の装填ミスも防げる。この巻き戻しノブは逆回転防止のクラッチが入っており、操作感は他のM型より、いやどんなカメラよりもスムーズだと思う。さてこれで撮影準備完了。おっと、フィルムの感度設定を忘れるところだった。このカメラにはDX接点など存在しないのだ。

 カメラを携行する路上では注意しなければならないことがふたつある。ひとつ目は「レンズには必ずキャップをすること」。これはすべてのM型ライカに、いや正確には布幕シャッターを持つレンジファインダーカメラに共通のお約束で、レンズを不用意に太陽に向けるとシャッター幕に穴があく恐れがあるからだ。虫眼鏡で紙に焼けこげの穴をつくるのとおなじ要領である。とはいっても、じっさいにこれをやった人は見たことがない。果たして何秒くらいで穴があくのだろう? いつか実験してみたいものだ。
 もうひとつの注意は「フィルムは撮影直前に巻き上げること」。これは最初の要件ともリンクしていて、M5は巻き上げ操作が露出計のスイッチを兼ねている。だから巻き上げたまま持ち歩くと、いや持ち歩かなくても巻き上げておくだけでバッテリーの消耗が速い。レンズキャップが外れていたらなおさらだ。
 ……とまあ、これはどこかの雑誌の受け売りである。僕の場合じっさいにはレンズキャップを外して、フィルムを巻き上げて持ち歩くことが多い。その方がとっさの場合すぐに撮れるからだ。今のところシャッター幕は無事だし、気が付くと電池が空だった、なんてこともない。だからお約束は無視して構わないのだ、いつか痛い目に遭うまでは。


2005年10月12日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部