* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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ズミルクス75ミリの絞り開放・最近接でジャズベースの達人を撮る。被写界深度は前後に1センチ程度、ピント合わせはかなり神経を遣う作業だ。この写真では狙ったG線とD線の間にほぼ正確に来ている。
Leica M5 + Summilux75mmF1.4 / FUJIFILM Neopan400 PRESTO
(C)Keita NAKAYAMA



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暗い場所でも確実にスローを切れるのはM型ライカの美質。慣れれば8分の1秒でもほとんどブレない。
Leica M5 + Summilux75mmF1.4 / FUJIFILM Neopan400 PRESTO

(C)Keita NAKAYAMA



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かつてはシステムカメラとしての偉容を誇ったM型ライカだが、M5の時代には一眼レフ「ライカフレックス」シリーズとの棲み分けが進み、カタログも薄くなる一方だった。縮小の一途を辿るMシステムにあって、このヴィゾフレックスは何と80年代半ばまで販売が(生産が、ではなく)継続された長寿アクセサリーだ。手前がII型、奥のM5に装着している方がIII型である。ヴィゾについてはまた項を改めて書くつもりだが、素晴らしいエルマー65ミリの描写はこちらをご覧いただきたい。
(C)Keita NAKAYAMA

『ライカとナチュラな日々 #19』

 M型ライカに限らず、距離計連動カメラを使うと「ピント意識」が強くなる。ピント合わせに強くなるのではない。カメラが正確なピントを要求してくるために、注意を傾けざるを得ないのだ。これは二重像合致式の距離計を積んだカメラの特質なのだけど、M型ライカはそのアテンションがことのほか強力である*。
 ご存知のように、この種のカメラはファインダー像が空中像(視野全体が素通しに近い像)になっている。一眼レフカメラのようなマット面が存在しないから、視野はたいへんクリアで、「これぞ真性ライブビュー」と呼びたくなるほどの臨場感がある。
 問題はその視野のど真ん中に鎮座する二重像部分だ。距離計連動機はこの部分でしかピント合わせができない。つまりヒノマル構図量産の危険性をはらんでいるわけで、この点マット面のどこででもピント合わせができる一眼レフのような融通無碍さがない。これは写真の撮り方によってはけっこう致命的だろう。

 とはいえ、ピントというのはそれほど厳密に合わせなくても良い場合がある。レンズの焦点距離や被写体との距離、そして絞りの設定値によっては、目測で撮った方が早いことだってあるのだ。M型ライカの場合、多少のズレが「見えてしまう」から罪が深い、ともいえる。桃ナチュラのようにピントをカメラ任せにしてしまえばどうだろう?
 じっさい、AFロックさえきちんと使えばナチュラSのピント的中率は高い。これは24ミリというレンズの焦点距離(被写界深度は焦点距離が短いほど深くなる)の恩恵もあるのだろう。日中でナチュラ1600のような高感度フィルムを詰めたら、ピントはほとんど百発百中だ。
 だから被写体に直感的に反応して撮るようなキャンディッド・フォトの場合、ナチュラSのようなフルオート・コンパクトカメラがライカに勝る可能性はおおいにある。なにより失敗がすくない。これは写真趣味にはたいせつなことだ。
 え? さんざん屁理屈をならべて結論がそれじゃあミもフタもないだろうって?
 ごもっとも。もちろんライカにだって良い点がたくさんある。素通しに近い空中像を観察しながら、絞りの設定による画面効果をあれこれ考える。一眼レフのようにボケが見えたりしないから(といってもあちらは絞り込みのプレビューが必要だが)、アガリを想像するには経験値の積み重ねが必要だ。低速シャッターによる微妙なブレも使えるし、適切な置きピンの位置を考える愉しみもある。
 ……と、僕が書くとなんだか自虐的になっているみたいだけど、これはM5と桃ナチュラを併用したこの数ヶ月の結論だ。つまり撮影機能が自動化される前の旧世代カメラというのは、写真撮影のプロセスそのものも愉しめる一種の快楽発生装置なのだ。ここでプロセスだけを愉しんでしまうと、めでたく写真機趣味が完結するのだが、どっこいM5にはまだ先がある。それはM5のキモ、露出操作のからくりだ。

*注:M型ライカは精密な実像式ファインダーを積んでいる。これはバルナック型ライカなどに採用された虚像式ファインダーに比べ(機構は複雑でコストが嵩むものの)距離計部分の分離が明瞭で精密なピント合わせが可能とされる。


2005年11月16日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部