* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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旗とポールと太陽に集中していたら人物の顔が隠れた。すべてを満足する絵はなかなか撮れない。
FUJIFILM NATURA-S + FUJICOLOR Reala ACE
(C)Keita NAKAYAMA



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上掲作とおなじ日に同じフィルムで、ただしこちらは40年以上も昔のレンズ。明らかに暖色寄りのトーンだ。ハレ切りの難しいレンズなので撮影には気を遣う。
Leica M5 + Orion-15 28mmF6 / FUJICOLOR Reala ACE
(C)Keita NAKAYAMA





『ライカとナチュラな日々 #20』

 さてそれにしても写真の露出は難しい。世の中には電気の力を借りずに適切な明るさの写真をものにする、いわば脳内露出計を生まれ持っているひともいるようだけど、そういう電脳化が果たされていない僕など、エレキの助けを借りても平気で露出を外したりする。
 思うにこれは撮り方に原因がある。たとえば人物を撮る場合、表情や仕草に注意がいって、背景や着ている服の明るさ(または反射率)などを見過ごしている。つまり光が読めていないというか、露出の基本をどこかに置きっぱなしにしているのだった。
 それがこの半年というもの、露出の的中率が妙に高い。これはライカM5を使い始めてからのことで、このカメラの測光システムは何故だか自分に向いているらしい。と思ったら、友人のM5ユーザーも似たようなことを言う。「古っくさい方式なんだけど、不思議と露出が合うんだよねぇ」と。
 その彼(職業写真家)との酔談で到達した結論はここに書くようなレベルではないけれど、いろいろ考えて僕自身が納得していることを書いておこう。既出のファインダー画像をもういちどご覧いただくと、M5の露出情報は視野下辺の大半を占めるスケールと、シャッター速度表示の二本立てである。ここで重要なのは露出スケールの方だ。
 太いスケールは上下に分離しており、これは間のスリットから背景をすこしでも見せようというライツの親心だろう。たいした意味はなさそうだが、両端に空いた半円の切り欠きにはおおいに意味がある。よく見れば左の切り欠きが太く、右が細い。この半円はじつは絞りの開閉操作を意味しているのだ(絞りリングの回転方向と同一、右側が開放になる)。
 スケール上を左右に移動する二条の線のうち、斜め45度の指針はシャッター速度に連動しており、もう一方はその速度と絞りの設定値によって導かれた光を露出計の受光部が測ったEV値だ。つまりこの二本が交わるところが適正露出となる仕組みで、最初にシャッター速度を設定し、しかる後にもう一方の指針を絞りリングで動かすというのが正しい使い方である。
 と、こう書いても実機に触れないうちはなんだかよく分からないと思う。じつは僕もスケール両端の切り欠きの意味にはずっと思い当たらずに使っていた(さいきんライカフレックスSLのファインダーを覗いていてようやく気が付いた)。それでも不都合はなく写真が撮れたのは、この露出システムが生理的に、というか直感的に使えるからだ。
 対象物の任意の部分をファインダー視野の中央に置き、二本の指針が交わるようにシャッター速度と絞りを設定する。そこから被写体の反射率を加味して露出補正を行うのだが、ここでシャッター速度ダイヤルには露出1段、絞りリングには露出の1/2段分ずつクリックが入る*。つまり完全なブラインドタッチが可能になるわけで、この仕組みさえ身体が覚えてしまえば露出の設定がたいへん確実に、かつ迅速に行えるようになる。

 もちろんこのシステムにも欠点というか、時代を伺わせる不備は多い。先に触れた表示の視認性や、絞り値が情報として欠落していることなどがそれにあたる。でもさいきんの情報集中ファインダーに慣れたアタマには、このシンプルな仕組みが却ってすっきり明解だったりする。
 時に「必要にして不十分」は「必要にして過剰」よりも好ましい、ということか。

*注:70年代半ば以降のライカのレンズには絞り操作に1/2段刻みのクリックが入るものが多い。ただし旧い製品は1段刻みが多く、また最近のツァイス製ZMマウントレンズは1/3段刻みのクリックが設定されている。M5での使用には注意が必要だ。


2005年11月22日掲載

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