* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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人物背面のガラス戸から射し込む光が強烈なフレアを生む。レンズの名誉のために記せばこれは前玉の拭き傷に起因するもの。絞ればハレハレは改善されるが、それなら他のレンズを使うべき。
Retinette + Schneider Reomar 45mmF3.5 / FUJICOLOR Reala ACE

(C)Keita NAKAYAMA



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ライカフレックス用ズミクロン50ミリ、絞り開放。被写体にやや寄って光源を切ったが、現代のレンズに比べればややハレっぽい描写。とはいえこれも他に代え難い味わいがある。
Leicaflex SL + Summicron 50mmF2 / FUJIFILM Neopan100ACROS

(C)Keita NAKAYAMA



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実に久しぶりに国産古典カメラを入手した。「ピジョン35」は昭和二十年代の後半に登場した国産大衆カメラで、ボディとレンズはそれぞれ別のメーカーが製造を担当、販売は東京のカメラ商社が独自のブランドを冠して行ったという。詳細はまた項を改めて記したい。
(C)Keita NAKAYAMA

『ハレ、時々クモリ #7』

 半可通な僕がはじめて手にしたトリプレットは、たぶん東独ウェルタ社のベルミラに搭載されたトリオプランというレンズだったと思う。記憶が定かでないのは、マイナーな機種はレンズ構成を特定するのが困難な場合が多いためで、知らずに使って手放したカメラにも三枚玉が付いていたかもしれない。
 あいにくとこのカメラ(今も手元にある)は距離計に問題を抱えており、さる修理の達人に整備をお願いしたところ、ほとんど目測でしか使えないことが判明した。それでも写真は撮れるのだが、この連載で採り上げるカメラたちに圧されて持ち出す機会がなかった。
 二台目の三枚玉カメラは今回のロケで使ったレチネッテだ。これにはシュナイダーのレオマーというレンズが付いていて、最初からトリプレットであることは分かっていた。ところが前玉に拭き傷が多く、逆光でフレアっぽくなることは間違いない。しかもこのレンズ、前玉回転で先鋭なピントはあまり期待できない*。周辺はおろか画面中心のピントも弱くてハレハレでは絵にならないだろう、と実用を諦め、脊山さんのレチナが壊れた際のパーツ取り用にと機材棚の隅に放置して忘れていたのだった(レチナとレチネッテは共用部品がけっこうある)。
 三番目は戦前コンタックス用のトリオター85ミリというレンズである。これは知人に借用したもので、ツァイスイエナの隆盛期を偲ばせる素晴らしい仕上げの鏡胴が魅力的だった。描写も外装に劣らず素晴らしかったが、焦点距離と口径比の関係で納得のいく写真が撮れないまま返却した。

 どうやら三枚玉にはあまり縁がないらしい。勝手にそう決めつけていたのだが、今回のロケの直前にベルミラとレチネッテを試写したところ、後者のレオマーには心底魅せられた。予想通り拭き傷の影響はおおきく、逆光では画面の情報がかなりの部分消失する。順光でもコントラストが低く、どう撮っても暗部が締まらない。現像後にコントラストを強制的に与えた画像は前回掲載した通りである。
 だが画面周辺を含むピント低下は危惧したほどではなく、順光でうっすらとベールがかかったような描写と相まって、ごく効果の弱いソフトフォーカスレンズのような趣がある。似たような描写のレンズは今までにも何度か経験しているけれど、このレオマーはピント(の弱さ)や色乗り(の浅さ)のバランスが絶妙なのだ。
 そういうわけで、今回は描写の欠点を逆手にとってみようとレチネッテを使った。アガリにはとても満足しているが、これは被写体の魅力に因るところが大きいし、またこの結果はトリプレットの特性とかけ離れたものだとも思う。いずれ完全な状態のレオマーを入手してみたいと思いつつ、傷玉がもたらした「怪我の功名」に、なんとなく得をしたような気になっているのである。

※制作協力:脊山麻理子

*注:前玉回転=レンズの全群を移動させず、一部エレメントのみの進退でピントを合わせる方式。通常は絞りおよびシャッター部材の前に位置するエレメントを回転移動させるためこの名で呼ばれる。全群繰り出し方式に比べて性能は劣るとされるが、機構設計が単純化できるため安価な目測カメラなどに採用例が多い。描写性能も実用充分なレベルを保ったカメラは少なくないようだ。



2006年01月18日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部