* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


写真
---> 拡大表示

今回のロケ場所は東京都下の秘密基地。写真愛好家のワンダーランドで、詳細は近々ご報告します。
Leicaflex SL2 + Summicron 50mmF2 / FUJICOLOR Reala ACE
(C)Keita NAKAYAMA retrofocus0605_04B.jpg



写真
---> 拡大表示

シャッタートラブルで不在だった愛用のレチナが戻り、ご機嫌の脊山さん。修理は四国の名人T先生(私の機材の主治医である)にお願いした。感謝。
Leicaflex SL2 + Summicron 50mmF2 / FUJICOLOR Reala ACE
(C)Keita NAKAYAMA



写真
---> 拡大表示

欲しいレンズが手元に揃った、あるいは欲しいレンズに手が出ない場合もライカはユーザーの暇潰しをちゃんと用意してくれる。初代フレックスに用意されたハードケースは機能と耐久性と優れた意匠でマニア心をくすぐる逸品。実用カメラにケースを着せるひとが少ないおかげで? 美品が多く、そのわりに値段はこなれている。同時代のM型用にも似た製品はあるが、造りのよさではこちらが上だろう。ただし初代フレックス用はSLに共用できるが、SL2には使えないので要注意。
(C)Keita NAKAYAMA

『サンクチュアリ #13』

 フレックス系ライカ一眼は、客に店の裏側を見せない。これはアマチュアに分解が難しい(実際にそうらしい)とかミラーボックスの内側が綺麗にフタをされているとか、そういうことではない。内部に収められたメカニカルな機構が、すべて外側の撮影者に違和感なく受け入れられるよう統制されているという意味だ。初代フレックスの巻き上げ感触に代表されるように、このカメラには機械式カメラにありがちなぎくしゃくとした操作感がどこにもない。これは基本設計が機械を知り尽くしたひとによってなされている為だろう。
 思うに、60年代初頭の数年間にこのカメラの土台をつくった技術者は、一眼レフの操作系についてかなりの試行錯誤を繰り返したのだろう。M型とはまったく異なる操作系統を、当時としてはかなりの短期間で練り上げたのだから、これは賞賛に値する仕事である。
 もうひとつ、僕が面白いと思うのはカメラの耐久性に関する考え方だ。「レリーズ何万回を保証」という風にシャッターの耐久性を謳うのは日本の高級機の常套手段だけれど、ライカのカメラはそういう惹句を使わない。というより、たぶんそこまでの耐久性は持っていない筈である。
 ではライカが日本製より長持ちしないのかというと、そうではない。国産カメラのシャッターが寿命を全うすればユニットごと交換されるのに対し、ライカフレックスは定期的なメンテナンスを受けることを前提に、主要部品は無交換で長期間使い続けることができるという。これはどちらが優れているかではなく、思想の差である。

 シャッターの話を出したついでに、フレックス系のそれについて書いておこう。このシリーズが積んでいるユニットは「四軸式布幕横走りフォーカルプレーンシャッター」である。シャッター幕を巻き取る軸を先幕・後幕それぞれ独立としたのは、ここを細くすることで慣性モーメントの減少を図ったためという。
 この設計のお陰でフレックス系のシャッターユニットは当時として最速*の水準となり、スペック上は二千分の一秒までの高速を出すことができる(実測ではそこまで出ていない個体も多いが、これは安全率を見越した調整の問題だろう)。もちろん単に高速を出すだけなら、駆動するバネのテンションを高めれば済むのだけど、そうするとシャッターユニットそのものを形成する各部の部材に無理な力がかかるし反動も強くなる。早い話が壊れやすくブレやすいカメラの出来上がりだ。
 それがフレックス系のシャッターは、あのM型の静粛性にはとどかないまでも、当時の水準を超える静粛性を獲得している。これは頑強なダイカストシャシーに包まれた精密なメカニズムの……いや、この話は前にも書いたっけ。
 言いたいのは、このシリーズが機械式カメラとして素晴らしい水準にあるということだ。それは精密な機械加工技術と精度の高い組み上げ、そして熟練の調整を前提とした設計のなせる技である。ということは、必然的に高コストを余儀なくされるわけで、やがてこの体質はライツ社自体を揺るがすことになる。

※制作協力:脊山麻理子


*注:シャッターを高速化する手段として、画面の横方向(長辺方向)ではなく縦方向(短辺方向)に幕を走らせる方法がある。かつてのレンジファインダー・コンタックスなどはこの縦走りシャッターを採用して高速化を果たしたのだが、レリーズ時のショックが上下方向に加わるため、この感触を好まないひともいる。フレックス系ライカは横走りシャッターとしては理論上の限界値に近い高速を実現していたのだが、さらなる高速化は幕を分割して縦方向に走行させるコパル・スケア方式が必然で、70年代後半からはこのユニットが業界のデファクト・スタンダードとなる。


2006年05月31日掲載

<--Back     Next-->



Copyright :
マカロニ・アンモナイト編集部