* 週刊フォトエッセイ*

Classical Photo-gear Explorers 東京レトロフォーカス

  文・写真/中山慶太 --->Back Number


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フィルム交換は慌てずに。
Leicaflex SL2 + Eimarit 19mmF2.8 / FUJICOLOR Reala ACE
(C)Keita NAKAYAMA



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足りない写真の腕を埋め合わせてくれるのはいつも被写体である。
Leica M5 + Viogtlander Nokton40mmF1.4SC / FUJICOLOR Reala ACE
(C)Keita NAKAYAMA





Special Edition 『許されざるカメラ(1)』

 久しく会っていない友人から撮影を依頼された。被写体は彼と奥様。前の冬に入籍したふたりだが、この新緑を待って式を挙げることになっていたようだ。芸術家肌(というか、職業が芸術家)の彼には似つかわしくなく、行動が計画的である。
 友人と僕とはカメラを通じて知り合った仲で、現実の世界では一度きりしか顔を合わせていない。にもかかわらず気心が知れているような気がするのは、彼が主宰する写真の掲示板で頻繁に言葉を交わしているからだ。ネット社会ならではのつきあいだろうか。
 とはいえ、彼がこちらの写真を気に入って声を掛けてくれたわけではなく、仲間うちへの打診に、さいしょに手を挙げたのが僕だっただけである。お金のからむ仕事ではないし、当日はほかに二人のベテラン(写真の腕は僕よりずっと確か)が駆けつけることにもなって、まぁ気が楽ではある。
 会場は新婦さんが卒業された大学の構内にあるチャペルらしい。創立時の建築をそのまま遺して使っているとのことで、それにかこつけて機材もフィルムカメラを使わせていただくことにした。となると、さてどのカメラを持って行くか、すぐにそういう方向に脳を使うのは、いやほとんど使わずに趣味に走るのはいつもの悪いクセである。
 重度のカメラマニアである新郎のウケを狙って、思いっきり変テコな機材を持ち込もうか。そういえば一度も使っていないチェコのトイカメラがあったなぁ。いやむしろここはひとつ由緒正しき蛇腹はどうだろう。まてよ、それとも。

 などと心をよぎったヨコシマな考えを縦に正して、五月晴れの空がひろがる佳き日にバッグに詰めたのは二台のライカだった。変哲もないチョイスだが、いちおうM型とフレックス系から一台ずつ選ぶことにする。イベントの格式に合わせるならM3と初代フレックス。でもそれだと参列の愛好家(必ずいる)と話が弾んで写真が撮れない畏れがあるので、ここはM5とSL2を選ぶ。どっちも黒で目立たないし、営業カメラマンに見えないというところがミソ。実は露出を外すのが怖いだけなのだけどね。
 レンズはひとしきり悩んだ結果、SL2に19ミリと90ミリ、M5には標準だけを付けることに決める。ライカの標準というとズミルクスかズミクロンだ。できれば明るいレンズの方がいろいろ痛痒なく使えるはずだが、僕のズミルクスは最初期型なので開放の描写はクセが強すぎる。
 で、けっきょく国産の40ミリを新調した。イチヨンの開放値のわりにとてもコンパクトなレンズで、試写の結果は開放でコントラストが立ちすぎることもなく、評判通りのレトロな写りだ。M5はその焦点距離の視野枠を持たないけれど、外部ファインダーを付けるほどのことでもない。50ミリの視野枠で余裕を持って撮ればいいのである。

 こうして計画された日に計略をめぐらせて挑んだ撮影だったが、モノゴトなかなか計算通りには運ばない。それを実感したのは、最初の1本で撮り始めた直後だった。


2006年06月07日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部